近年動物たちが人間の生活圏に出てくることが増え、こうした状況から、動物とクルマの接触事故も増えている。軽微な接触では済まない動物との事故。「修理費用は車両保険に加入しているから大丈夫~」と考えている人、動物との接触事故では保険が下りないケースがあります。もし動物との事故が起きたらどうするべきなのか、対処方法を解説していきます。
文:佐々木 亘/写真:Adobestock(Katja@Adobestock.com)・ベストカーWeb編集部
■従来のエコノミー型車両保険、実は対動物補償がNG?
愛車を事故被害から復旧させる費用を賄うのが車両保険の役割です。車両保険には大きく分けて「一般型」と「エコノミー型(車対車+A)」の2種類があります。
一般型は、自損事故・当て逃げや飛び石など、あらゆる損害に対して補償が適用されるものです。その分、支払う保険料が高くなります。
一方、エコノミー型の補償は、保険料が安い分、相手が特定できる事故に限定されているのです。
そのためエコノミー型では、当て逃げや動物との接触事故は、補償対象外とされています。ただ、いたずらによるクルマ損傷は、相手が特定できないにもかかわらず、エコノミー型でも補償されるという点には、矛盾を感じることもあるでしょう。
※いたずらによる車両損傷がエコノミー型車両保険で補償される理由は、他人のクルマにいたずらで傷を付ける行為が、器物損壊罪(刑法261条)に該当するからです。いたずらが立証され被害届が受理されれば、事故の相手が特定できたことと同じ扱いとなります。
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■半端じゃない衝撃!動物とぶつかる恐怖
実際に猪や鹿とぶつかると、クルマ同士の事故よりも被害が大きくなることもあります。
北海道警察によると、令和元年には3,000件台だったエゾシカとの接触事故は、令和5年には5,000件超まで増加しているというのです。動物との接触事故は、他人事ではありません。
実際、筆者は猪と衝突したクルマをみたことがありますが、フロントバンパーは外れ、ボンネットが大きく歪んでいました。
損傷の大きさは、比較的大きなスピードで建造物にぶつかったような感じです。また、運転していた人は急ブレーキとぶつかった衝撃で、頸椎捻挫と診断されました。
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■動物が「事故の相手」として認められた!その後は?
事故の相手が特定できることが補償の条件だったエコノミー型車両保険において、近年動物との事故を補償対象とする動きが出てきました。
これまでは、モノという扱いだった動物が、事故の相手となるのは大きな保険の変革です。大手損害会社が2023年1月から、エコノミー型車両保険の補償対象に動物との接触を追加しており、2024年1月からはほとんどの保険会社の車両保険の内容が、動物対応に改定されました。
保険を利用するためには、動物と衝突した場合にも、いたずらと同様に必ず警察への報告を行いましょう。ドライブレコーダーを搭載しているクルマであれば、録画データを提出します。
こうした対応で、事故相手を証明することができ、エコノミー型車両保険でも、動物との接触事故に対応できるのです。
注意点は、車両保険の改正が2023年から2024年にかけて行なわれている点。それ以前に保険始期となり、現在も継続して契約が続いている長期保険等では、補償対象外となっていることもあります。詳しくは、担当の保険代理店に確認してみてください。
いわずもがなですが、動物注意標識のある場所では、思いがけない場所からの動物の飛び出しに注意しながら、運転することが大切です。
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