クルマの性能を語る際に注目されるのが燃費。特に昨今では燃費性能がより重視されるようになり、燃費が悪いクルマの評価は低くなりがち。しかし、過去には現在とは比べものにならないほど燃費の悪いクルマがあった?

文/長谷川 敦、写真/トヨタ、マツダ、ランボルギーニ、Newspress UK、FavCars.com

■高燃費=悪になってしまったのはなぜ?

燃費の悪いクルマといっても、それには理由がある。写真のジープ チェロキーXJのように頑強で重く、パワーのあるクルマはどうしても燃料消費量が増えてしまう

 そもそも燃費とは「燃料消費率」の略称であり、クルマでは1リッターの燃料で何km走れるかで表すことが多い。

 つまり、走れる距離が長ければ長いほど燃費性能に優れているといえる。

 ちなみに、燃費性能に優れていることを低燃費といい、燃費の悪いクルマは高燃費車と呼ばれているので注意してほしい。

 クルマ用燃料のほとんどは石油から作られていて、化石資源である石油はいずれ枯渇する運命からは逃れられない。

 だから燃料消費を抑えて石油の枯渇を遅らせるのは正義ともいえる。

 もちろん、限りある資源の有効活用という大きな話も大切だが、クルマのオーナーにしてみれば、燃費の悪いクルマは当然燃料代の出費がかさむ。

 現在は人類の歴史上最もエコロジーが注目される時代であり、ガソリンを激しく消費するクルマのイメージが悪くなるのはある意味仕方がない。

 だが、ハイブリッドをはじめとする技術の進歩によって、現代のクルマは総じて以前よりも燃費性能が向上している。

 そこで今回は、現在ほど燃費がうるさくいわれなかった時代なのにもかかわらず、燃料消費の多さで注目された懐かしのクルマを振り返りたい。

 ただし、絶対的な燃費の数値ではなく、燃費の悪さがある意味ネタになったクルマを中心にピックアップしている。

■国産で燃費が悪かったのはどんなクルマ?

●マツダ ユーノスコスモ(4代目)

 いまでも燃費が悪かったことが話題になるクルマの筆頭が1990年に登場したユーノスコスモだ。

 当時マツダが進めていた販売店の多チャンネル戦略に乗ってユーノス店から販売されたこのユーノスコスモは、マツダ伝統のコスモの名称を継承していた。

 車格的には高級パーソナルクーペに属し、マツダのお家芸だったロータリーエンジンを搭載するが、量産車としては世界初の3ローター型ロータリーエンジンだったのがポイント。

 この3ローターエンジンにシーケンシャルターボが組み合わされ、最高出力は280psを発生するなど、高級車にふさわしい動力性能が与えられていた。

 しかしパワーと引き換えに燃費性能が犠牲になり、カタログスペックは6.1km/Lであるものの、実情は街乗りで2km/Lを切ることもあるというすさまじさ。

 日本のバブル景気時代を象徴するようなクルマだったが、販売成績は伸びず、コスモの歴史もこのモデルとともに1996年に終了している。

●トヨタ ランドクルーザー80

 世界的SUVのトヨタ ランドクルーザーシリーズは、タフな車体と足回りにパワフルなエンジンを搭載することにより極めて高い悪路走破性を発揮するが、その引き換えに燃費は厳しい。

 もちろん近年のランドクルーザーには数多くの改良が施され、最新の250系ではシリーズ初のハイブリッドモデルがラインナップされるなど、燃費性能も向上している。

 しかし、過去には燃費の悪さで知られたランドクルーザーもある。

 1989年に登場した80系がそのモデルで、海外をメインターゲットにしたランドクルーザーだが、燃費はカタログデータで5.7km/L、実際の街乗りでは5km/Lを下回ることもあったという。

 ランドクルーザーシリーズが燃費を最優先したクルマではないのを前提としても、かなりのガソリン喰らいであるのはいうまでもない。

 ランドクルーザー80もユーノスコスモ同様に国内バブル景気最盛期のモデルだということが偶然とは思えない。

●スバル アルシオーネSVX

 スバルが1991~1996年に販売していたスペシャルティクーペがアルシオーネSVX。

 先代のアルシオーネとは名称を同じくするものの、実際には新規開発のモデルであり、日本国内では4WD仕様のみが販売されている。

 エンジンは3.3リッター水平対向6気筒で、自然吸気(NA)方式ながら240psを叩き出すパワフルさもウリだったが、それによって燃費が犠牲になった。

 カタログでは10モード/10.15モード燃費で7km/L、実際には5km/L程度だったという話もある。

 ジウジアーロが手がけた流麗なボディや4WDなど、魅力の多いクルマではあったが、皮肉なことに燃費の悪さで注目を集めてしまった。

■海外車の燃費はいかに?

ジープ チェロキーXJ(写真は1993年モデル)。ラダーフレームを持たず、街乗りも考慮されたSUVモデルだったが、燃費は6km/Lとかなり厳しいものだった

 続いて紹介するのは燃費の悪いクルマ海外編だ。

 現代でこそ海外でも燃費性能は注目の的になっているが、かつての“アメ車”は大飯喰らいの代名詞であり、欧州にも燃費の悪いクルマは存在していた。

 ここではそのなかから2台をピックアップしてみた。

●ジープ チェロキー(XJ)

 1984年にデビューしたアメリカン・モーターズのジープ チェロキーは、フルサイズのSJ型チェロキーよりはコンパクトで、モノコックタイプのボディを持つ新世代のSUVだった。

 このチェロキーXJは人気モデルとなり、細かい改良が加えられながら2001年まで生産が続けられた。

 日本での評価も高かったが、燃費に関しては優等生とはいえず、平均的な燃費は6km/L程度だったという。

 いわゆるアメ車のなかでは突出した燃費の悪さではないものの、オーナーは燃料への出費を覚悟する必要はあった。

●ランボルギーニ ムルシエラゴ

 最後に紹介するのはイタリアン・スーパースポーツカーのランボルギーニ ムルシエラゴだ。

 走行性能を優先したスポーツカーの燃費は悪くなりがちだが、そのなかでもムルシエラゴは横綱クラスといわれていた。

 2001~2010年に製造販売されていたムルシエラゴシリーズで、後期に登場したLP640(2006年)は、V型12気筒エンジンがそれまでの6.2リッターから6.5リッターに排気量アップされ、最高出力も580→640psに引き上げられた。

 さすがにこのスペックでは燃費にしわ寄せがきて、アメリカ環境保護局とエネルギー省が2010年に発表する燃費ワーストランキングにおいてムルシエラゴのMT仕様が市街地燃費3.4km/L、高速燃費5.53km/Lでワースト1位に選出された。

 今回紹介したクルマのほとんどが、燃費は悪いながらも他の部分では多くの魅力を持っている。

 だからこそ、高燃費を許容できる人々がそのクルマを求め、高い支持を得ていた。

 今後はますますクルマの燃費が重視される時代になり、バッテリーEVのように走るために化石燃料を使用しないモデルも増えてくる。

 そう遠くない将来、燃費は悪くとも魅力に満ちたクルマたちは、思い出のなかでのみ輝く存在となっていくのかもしれない。

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