全国には、茨城ダッシュ、松本走り、名古屋走り、大阪走り、岡山ルール、伊予の早曲がり、阿波の黄走り、佐賀のよかろうもん運転といったさまざまな「ご当地走り」がある。はたしてどんなご当地走りがあるのか、今回は西日本篇をお届けしよう!
文:ベストカーWeb編集部/写真:ベストカーWeb編集部、Adobe Stock(トビラ写真:yamasan@Adobe stock)
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■関西地方も大阪、兵庫、岡山とご当地ルールがある
今回は関西のご当地走りを紹介していこう。まずは「大阪走り」。大阪では信号のローカルルールとして「青は進め、黄色は進め、赤は気をつけて進め」というのがあるらしい。
信号無視、割り込みが目立つ大阪走り。2023年末の交通事故発生件数を見ると2万5951件で大阪府が1位、交通事故死者数でも148人と1位と全国ワースト1だ。
さて大阪ではどんな走りをするのか、大阪在住の知人に大阪の交通マナーを聞いてみた。
「特に谷町筋や御堂筋の流れの速さや車線変更の激しさは半端じゃない。ウインカーは出した瞬間に入らないと入れてもらえないし、少しでもクルマが入れる隙間があるとそこに入ってくる。サンキューハザードなんて存在しない。
駐車のマナーも悪い。交差点の角に普通にクルマを停める。場所によって二重駐車は当たり前、名古屋走りよりはましかな。最近は減っているようだけど……」。
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■あまりの交通マナーの悪さから「播磨道交法」を作った!?/兵庫県
関西では交通マナーの悪いナンバープレートは、1姫二太郎になぞらえて「1姫(兵庫県姫路市)、2和泉(大阪府南西部)」といわれ、特に兵庫県西部の姫路ナンバーのクルマがマナーの悪いとされている。
その姫路を含む播磨地方における交通マナーやルールのことを「播磨道交法」という。道交法とあるが、もちろん播磨地方に実在する法律ではない。播磨ルール、姫路ルールともいわれている。
地元の神戸新聞の連載から生まれたもので、地域の運転マナーの悪さを自戒の意味を込め、「播磨道交法」という法律のような文章で紙面に掲載。以下に播磨道交法を挙げるが、逆張りで、播磨地方の交通マナーやルールを書いたものだ。
第1章:交差点
1:先に入ったクルマが優先。右折時、対向車が直進してきても待つ必要なし。
2:右折時、対向車が左折なら一緒に曲らなければならない。 左折車を先に行かせていると、右折待ちの後続車からクラクションを鳴らされる。
3:自転車や歩行者は、クルマが通らなければ、赤信号は青とみなす。
4:右左折時、横断歩道を人が歩いていても通れるスペースがあれば、すり抜けるべし。
5:右折は、右折信号が出てからが勝負。右折信号が消え、赤と続く数秒間に何台潜り込めるか。
第2章:歩道、車線変更
1:信号のない横断歩道。歩行者は、クルマが途切れるまで待つべし。クルマは止まってはくれない。
2:車線変更。狭い間隔でも、スペースさえあれば割り込み可。
3:指示器は曲がると同時に出す。
第3章:附則
1:バスは、停留所から車線に戻るとき、辛抱強く待たなければいけない。
2:前に人がいれば、クラクションで道を空けさせる。
なぜこうした交通マナーが生まれたのか? 限られた道路のなかで、地域の利用者が車間距離を詰めたまま高速走行するようになり、これが播磨道交法を生み出したという見方があるほか、姫路市は松本市(松本走り)と同様、城下町から発展した都市のため、道の狭い交差点が多く、右折車で渋滞しやすい道路事情からではないかといわれている。
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■悪名高い運転マナーを県民が自覚している「岡山ルール」/岡山県
名古屋走りや茨城ダッシュなどと並ぶ悪しき運転習慣として名高い「岡山ルール」。車線変更や右左折をウインカー1回だけ、出すとしても方向転換の直前に出す、あるいは出さずに行う危険運転のこと。
JAFが行ったアンケートでは、方向指示器を出さずに車線変更や右左折するクルマが多い都道府県の質問に「とても思う」と「やや思う」と回答した割合が岡山県は91%で全国最多。
さらに「あなたのお住まいの都道府県の全般的な交通マナーについてどう思いますか?」という質問で「悪いと思う」と回答したのは44.1%、「とても悪いと思う」は14.5%という回答で全国平均をはるかに超えている。
またJAFが信号機のない横断歩道の一時停止率の調査したところ、岡山県は2021年には10.3%で全国ワースト1だった。
ただし、この結果を受けて岡山県警が横断歩行者妨害に重点を置き、取り締まりを強化(2018年282件→2022年8042件)した結果、2022年には49.0%、2023年には47.8%と全区25位へ下がり、汚名を返上している。
岡山県警では2005年開催のおかやま国体に合わせて交差点の手前約30mの地点に、マスカットグリーンの星形に「合図」と書かれた路面標示を設置したほか、岡山南警察署ではドライバーにウインカーを適正に出すことを促す目的で「横断歩道マン」や「横断歩道レディ」という啓発キャラクターも生み出した。
2016年に岡山県警が実施したアンケート調査では交通ルール違反が目立つ行為として、クルマが「合図(ウインカー)をしない、合図(ウインカー)が遅い」と72%の人が答えている。しかし、その一方で76%が「毎回、合図(ウインカー)を出している」という回答(矛盾してないか?)。
なぜ、このような岡山ルールが生まれたのか? これはひとえに岡山県民の県民性から来ているのではないか。岡山県民は中央に反発する意識が根底にあり、長いものには巻かれたくない我が道をゆく県民性を持っているそうで、他方、ウインカーを出すのは初心者、ウインカーを出さないほうがカッコいいという考えがあるという。もはや岡山ルールを直すには根本的に無理かもしれない……。
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■信号が黄色に変わるとスピードを上げる「阿波の黄走り」/徳島県
「阿波の黄走り」は 交差点で信号が黄色になった際に、アクセルをさらに踏み込み加速して通過する運転。
2016年にJAFが行った自分が居住する都道府県の運転マナーは悪いと答えた人のランキングでは全国平均38.3%のところ、徳島県は73.5%と2位だった。交通マナーが悪いということを自覚はできているようだ。
そもそも黄色信号は進んでいいのか? 信号機は青が「進め」、赤が「止まれ」、では黄色は? と聞かれたら、「注意して進め」と答える人が多いかもしれない。黄色は「注意して進め」ではない。「止まれ」が正解。ただし、青色から黄色に変わった瞬間に安全に停止することができない時、つまり急ブレーキを掛けないと止まれない場合を除く、とある。
●道路交通法施行令 第2条(黄色の灯火)
車両及び路面電車(以下この表において「車両等」という。)は、停止位置をこえて進行してはならないこと。ただし、黄色の灯火の信号が表示された時において当該停止位置に近接しているため安全に停止することができない場合を除く。
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■「へこらいルール」(徳島県)
阿波の黄走りの拡大版。“へこらい”とは「ずるい、抜け目がない」という意味の徳島県の方言。ウインカーは曲がる直前に出す。ちょっとしたことですぐクラクションを鳴らす、信号が赤になっても2~3台は信号無視して進む。信号黄色になるとスピードを加速する、信号が黄色で止まろうとすると思い切りクラクションを鳴らされる、前が混んでいてスピード出せないのに後ろのクルマが車間距離を詰めてあおったりクラクション鳴らす。こうしたマナーの悪い運転を「へこらいルール」と言うらしい。
■対向の直進車より先に右折する「伊予の早曲がり」(愛媛県)
交差点の右折時、対向車が接近しているのに先に曲がってしまう行為、また青信号になった瞬間に対向の直進車が走り出す前に右折する行為を「伊予の早曲がり」という。愛媛県伊予市が発祥とされる交通マナーの悪さを表す言葉で30年くらい前から愛媛県民に認知されていたらしい。
愛媛県警が発表した2023年の愛媛県内の地形別、道路形状別交通事故発生状況と見ると、無信号交差点が33.7%と最も多く、交差点付近が16.7%、信号交差点が16.4%と、交差点での事故が全体の66.8%を占めている。
愛媛県警察はこのような状況から「いけんよ!“伊予の早曲がり”は危険な交通違反です!」というチラシを作成し、交差点における交通事故の防止を呼びかけている。
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■4つの交通マナーに分類して交通事故根絶を目指す「よかろうもん運転」(佐賀県)
佐賀県では県民から寄せられた佐賀県ドライバーの運転の特徴を「車間詰めてもよかろうもん」、「信号守らんでもよかろうもん」、「スマホ使ってもよかろうもん」、「合図出さんでもよかろうもん」と4つに類型し、2018年に「よかろうもん運転」と定め、マナーの悪い運転の根絶に向けて交通安全運動を展開している。
なぜ自治体自らが「よかろうもん運転」と定めたのか? 佐賀県で2023年に発生した人身事故3238件のうち追突事故は1396件で43.1%を占め、人口10万人あたりの交通事故の発生件数が全国ワースト4位となったから。それにしても「よかろうもん運転」根絶に向けた努力には恐れ入る。佐賀県のドライバーのみなさん、よかろうもん運転をしないように頼みます!
次回は「ご当地走り東日本篇」をお届けします。お楽しみに!
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