欧米ではポピュラーなスタイルの交差点がラウンドアバウト。メリットも多い周回型交差点なのだが、我が国ではめったに見ることがない。今回は、どうして日本ではラウンドアバウトが少ないのかを考えたい。

文/長谷川 敦、写真/写真AC、Adobe Stock

■ラウンドアバウトとはどんな交差点なのか?

ラウンドアバウト発祥の地・イギリスは自動車左側通行の国なのでラウンドアバウトは右回り(時計回り)になる(whitcomberd@Adobe Stock)

 「ラウンドアバウト(Roundabout)」とは、日本語で「環状交差点」あるいは「周回型交差点」と呼ばれるタイプの交差点を指し、その名称どおり中心が環状(サークル)になった交差点のこと。

 具体的にどういう形状なのかは、この記事に掲載した写真を見てもらうほうがわかりやすいだろう。

 ちなみにラウンドアバウトはイギリスが発祥の呼称で、アメリカでは「トラフィックサークル(Traffic Circle)」などと呼ぶこともある。

 なお、厳密な意味でラウンドアバウトとトラフィックサークルを区別する場合があるが、ここでは現代で使われるラウンドアバウトをメインに話を進めたい。

 ラウンドアバウトの基本的な特徴は信号がないことであり、いったんラウンドアバウト内に進入したクルマは、目的の方角に行くまでクルマを止める必要がない。

 つまりストップ&ゴーの必要がなく、うまくいけば目的地に着くまでほとんど停車させることなくクルマを走らせることができるという便利な交差点なのだ。

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■ラウンドアバウトはどうやって走るの?

 日本のドライバーがイギリスをはじめとする欧米の国でクルマを運転する際に、最初に戸惑ってしまうことのひとつにラウンドアバウトの走り方がある。

 地元のクルマはスムーズにラウンドアバウトを通過していくのに、走り方を知っていないと進入、そして脱出のタイミングがわかりにくい。

 そこでここからは簡単にラウンドアバウトの走り方を説明するが、日本と同じ左側通行のラウンドアバウトを例にする。

 右側通行のラウンドアバウトは走る方向が逆になるが、基本的な考え方は同じだ。

 大前提として守ってほしいのは、ラウンドアバウト内は一方通行であることと、サークルを走っているクルマが優先なこと。

 これらの前提が頭に入っていれば、ラウンドアバウトは攻略したも同然だ。

 ラウンドアバウトに進入する時は、十分に減速し、すでに周回しているクルマが右側から来ないことを確認してサークル内に入る。

 右からクルマが来ている場合、大幅に減速するか一時停止してそのクルマを先に行かせる。

 そしてサークルを走りながら自分の行きたい方向の出口を確認し、左側のウインカーを点滅させながらラウンドアバウトの外に出る。

 と、文章で書いてしまえばこれだけ。

 左折する場合はラウンドアバウトを1/4周し、右折の時はラウンドアバウトを3/4周する。

 結果的に交差点を直進する場合でも、ラウンドアバウトを1/2周する必要がある。

 もし脱出のタイミングを逃してしまっても、もう1周走って次のタイミングで直進路に出ればいいだけなので慌てる必要はない。

 ラウンドアバウト内を走るドライバーは直進から進入してくるクルマに気を配り、進入車両のドライバーは周回しているクルマが自分のいる方角に曲がってくるのか、それともその先に行くのかを判断する。

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■こんなにある、ラウンドアバウトのメリット

 では、ラウンドアバウトにはどのようなメリットがあるのだろうか?

●スムーズな通行が可能

 信号機のある交差点では、進行方向が交差するクルマのどちらかが停止しなくはならないが、ラウンドアバウトならすべての方角から来るクルマが止まらずに通行できる。

●安全性が高まる

 一般的な交差点で多いのが右折しようとするクルマと直新車が衝突してしまう事故だが、ラウンドアバウトではこのような事故はほぼ起こらない。

 また、進入時にスピードを落とし、周回しているクルマも速度が落ちているので、万が一接触事故が起こってしまった場合でもダメージを抑えることができる。

●Uターンが容易

 交差点でUターンをする場合、直進してくるクルマに十分注意しなくてはならず、危険という理由でUターンが禁止されている交差点もある。

 これがラウンドアバウトの場合、一度サークルに入ってほぼ1周し、入ってきたのと同じ方角の出口から出れば簡単かつ安全にUターンが行える。

●災害時にも通行が可能

 災害などが起こって電気の供給が止まると、信号式の交差点は機能不全に陥ってしまう。

 その点ラウンドアバウトは元々信号機を使用していないため、通常どおりの運用が可能。

●設営と維持の費用が少ない

 これは使用する側というより行政側のメリットだが、電気式の信号機を使わないラウンドアバウトは設営を行う際の費用がかからず、維持費も少ない。

 信号機を正常な状態で維持するのは意外とコストがかかるので、このメリットは無視できない。

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■実はラウンドアバウトにもデメリットはある

イギリスの街中に作られたラウンドアバウト。特殊な例を除いて最低限このくらいの土地サイズが必要なのが難点ではある(teamjackson@Adobe Stock)

 ここからはラウンドアバウトのデメリットを紹介していこう。

●設営に広い土地が必要

 中心にサークルを持つラウンドアバウトは、当然ながら通常の交差点より大きな面積が必要になる。

 なかにはかなり小さい周回円のラウンドアバウトもあるが、これではラウンドアバウトの本来の良さが発揮されにくい。

 日本であまりラウンドアバウトが普及しない理由のひとつにこの土地問題があげられる。

●交通量が多すぎると流れが止まってしまう

 ラウンドアバウトが成立するにはスムーズなクルマの流れが絶対条件になるが、クルマの数が一定量を超えるとこれが突然破綻をきたす。

 多くのクルマがサークル内に入るに入れず、出るに出られずで詰まりを起こしてしまうのだ。

 こうした問題を改善するために、進入前を一時停止にしたり、ラウンドアバウト内に信号を設けたりしたこともあったが、これは本末転倒といえる。

●横断歩行者の歩く距離が長くなる

 ラウンドアバウトでは、横断歩道がサークルの外周からやや離れた距離に描かれる。

 これはラウンドアバウトの構造上、仕方ないことであり、クルマの入出をスムーズし、歩行者の安全を確保するための措置といえる。

 つまり交差点を横断しようとする歩行者は、自分のいる場所の対角線側に移動しようとする際の距離が長くなってしまう。

■日本にもラウンドアバウトはあるのか?

 主に土地サイズの理由により、日本へのラウンドアバウト導入はあまり進んでいないが、それでも2024年現在の時点で日本全国に150以上のラウンドアバウトが存在している。

 2013年にはラウンドアバウトの高い安全性が注目され、この年に改正された道路交通法でラウンドアバウトの定義が正式なものとなった。

 このため日本でもラウンドアバウトが増えているが、全国の交差点数を考えるとその割合はまだまだ少ない。

 最初のうちはちょっとしたアトラクション気分で走れるラウンドアバウトは、クルマの流れを止めずに安全性の向上にも貢献するものなので、今後の増加にも期待したい。

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