近年、クルマのタイヤが大型化している。最近はセダンでも平気で20インチを履いてくるし、上級SUVでは21インチや22インチ装着車も珍しくは無い。しかし、一概にタイヤが大きすぎるのも考え物だ。そこで今回は、最廉価グレードが履くような小さなタイヤに、スポットライトを当てていきたい。

文:佐々木 亘/写真:トヨタ

■かわりつつあるタイヤの「標準」

トヨタ クラウンセダン。タイヤサイズは標準で19インチ、オプションで20インチまで用意されている

 一昔前なら、乗用セダンのタイヤサイズは195/66R15あたり。ちょっと豪華な仕様でも、205/60R16が良いところ。17インチや18インチを装着するなんて、根っからのカスタム好きしかやらないことだった。

 それが今や、標準仕様で16インチや17インチを履く時代。クラウンセダンなんか標準が19インチ、オプションで20インチまで用意されているからびっくりする。

 確かに低扁平で太いタイヤは、安定感があるし、ステアリング操作に対してクルマもクイックに反応してくれる。見た目を良くするために大型アルミホイールを装着し、走行性能を高めるために低扁平で幅広のタイヤを履くことは悪くないだろう。

 ただしタイヤは消耗品だ。数年もしくは数万キロで寿命がやってくる。インチが大きくなり、低扁平で幅広になればなるほど、タイヤの値段は高くなるのが一般的だ。愛車の履くタイヤがこんなにも高いのかと、交換時に初めて知るというオーナーも珍しくないだろう。

 車両購入時には、必ず装着タイヤとホイールのサイズを確認しておくことをおススメしたい。装着しているタイヤが、どのくらい価格で売られているのかを知っておくことが、クルマ選びの第一歩とも言える。

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■タイヤ1本でそんなに差が出る? 1セットの差額は10万越えってマジか

トヨタ プリウス(30系)。グレードによってさまざまなタイヤサイズが用意されていた

 装着しているタイヤのサイズで、クルマの維持費は結構変わってくる。例えば、新車装着タイヤのサイズが豊富にあった、30系プリウスでその価格差を見ていきたい。

 最廉価のLグレードでは185/65R15を装着。GとSグレードでは195/65R15を履き、ツーリングセレクションになると215/45R17へサイズアップ。さらにツーリングセレクションG’sになると215/40R18が装着されていた。

 それぞれの価格を、ブリジストンのオンラインストア専用商品「Playz PX-II」で比較していこう。以下にサイズと価格(タイヤ本体+取付料金)を並べていく。

・185/65R15 1本:20,020円 4本:80,080円
・195/65R15 1本:22,000円 4本:88,000円
・215/45R17 1本:37,950円 4本:151,800円
・215/40R18 1本:50,600円 4本:202,400円
※2024年8月現在のオンライン表示価格

 最も小さなサイズと最も大きなサイズのタイヤ価格差は、1本あたり3万円以上、1セット4本では12万2000円以上になるのだ。

 こうした現実を知ると、大型タイヤの装着も手放しでは喜べなくなってくると思う。さらに、日常的なあの数値も、タイヤサイズによって変わってくる。

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■大きなタイヤホイールは重くて抵抗大! それだけ燃費も落ちてくる

筆者の乗る30系プリウスの場合、タイヤサイズによって実燃費が4~5km/L変わるという

 メーカー公表のWLTCモード燃費では、タイヤサイズの違いによる燃費の差はごくわずかだが、実燃費では結構数値が違うことも多い。

 例えば筆者の乗る30系プリウス。G’sで夏タイヤは215/40R18を装着していて、平均燃費は17km/L~18km/Lあたりだ。スタッドレスタイヤは195/65R15を装着していて、平均燃費は21km/L~22km/L程度。タイヤとホイールのサイズが違うだけで、実燃費が4~5km/L変わってくる。

 プリウスの燃料タンクは45Lだから、1度の給油で走れる距離に180km~225kmもの差が出てくるのだ。ガソリン価格も高騰している昨今、この差は結構大きいと思う。

 タイヤサイズによって、タイヤの購入代や毎日の燃料代といったクルマの維持費が大きく変わってくる。許される範囲の中で小さいタイヤを履くことが、お財布には優しいクルマとの付き合い方だ。

 特に上級グレードを選んで、インチの大きなタイヤを装着している場合、冬タイヤが必要となる地域ならスタッドレスタイヤを最廉価グレードの装着するタイヤサイズに合わせると良い。

 大きなタイヤだけがフィーチャーされている昨今だが、小さなタイヤにも良いところはたくさんある。タイヤ選びで浮いたお金は、先進装備をプラスする原資にしてもいい。タイヤ選びも「賢く」が大切なのだ。

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