自治体のごみ収集事業の広報車両である「スケルトンパッカー車」でも、ついにバッテリーEV(BEV)が誕生した。さきごろ東京都の港区が導入したもので、日本初となる実車が10月12日に初披露された。その意外な特徴とは?
文/トラックマガジン「フルロード」編集部
写真/極東開発工業、港区
3代目は電気トラックしかも新造車!
中身がみえるごみ収集車ことスケルトンパッカー車(カッティングカー)とは、ごみ収集車(塵芥車)がどのような構造でごみを積み込んでいるのかが学べるよう、本物の塵芥車をベースに荷台部分に架装されるボディの一部をカット、透明パーツを組み付けたもので、実際に稼働させてダミーごみの積込体験も行えるクルマだ。
港区では、2003年に最初のスケルトンパッカー車「みえる号」を導入、2015年に2代目(運用から外れた小型CNGトラックベースの塵芥車をスケルトン改造した車両)へ代替したものの、CNG(圧縮天然ガス)の圧力タンク使用期限が今年9月に満了を迎え、タンク交換コストも高額であることから、期限満了と同時に2代目自体の運用を終了した。
今回公開された3代目「みえる号」は、その後継車として、新たに小型BEVトラックを架装ベースに起用したもので、BEVのスケルトンパッカー車は国内初となる。
みえる号の最大の特徴が、前述のとおり外部から塵芥収集ボディの内部を見るためのカッティング加工を施していることだが、2代目のように運用から外れた塵芥車を転用することが多いスケルトンパッカー車としては異例の新造車であることから、後部収集装置側面の開閉式カバー全体の透明パーツ化を実現しており、積込装置を作動させる油圧機器の動きが、従来よりも見学しやすくなっている。
みえる号の専用装備とeキャンターの特装機能
3代目みえる号は、三菱ふそうの小型BEVトラック「eキャンター」の標準キャブ・ホイールベース2500mm・Sサイズバッテリー(高電圧バッテリー容量41kWh)仕様のシャシーをベースに、大手特装車メーカー・極東開発工業の塵芥収集ボディ「プレスパック」を架装したもので、塵芥車の艤装・仕様としては、東京23区内ごみ収集事業で用いられている圧縮板タイプの塵芥車に近いという。
また、ボディの側面とリアの上部に、広報用のLED表示器とスピーカーが組み込まれていることや、積込装置と庫内に特別な塗装を施し、圧縮板と排出版にそれぞれ港区のキャラクターを描いたこと、内部照明の設置などが、みえる号特有の装備である。
なお、荷箱容積は4.3立方メートルで、極東開発が通常のディーゼル車向けに供給している圧縮式塵芥収集ボディおよび油圧機器とほぼ同一ではあるが、電動トラックシャシーに対応したタイプには「eパッカー」という名称が与えられている。
そして、みえる号を含めて特装車にとって重要な装備を、eキャンターは備えている。それは、キャビン床下に「ePTO」(電動式動力取り出し装置)を装備できることで、塵芥収集ボディを作動させる油圧を得るためのポンプを、このePTOによって回すことが可能になっている。
通常のディーゼル車ではエンジンのパワーでPTOを回して油圧ポンプを駆動するのだが、ePTOは高電圧バッテリーの電力で専用モーターを回して油圧ポンプを駆動する仕組みである。eキャンターはこのePTOの実用化でも世界的に先行しているうえ、ePTOが荷台やシャシーサイドのスペースを侵食しないよう設計されているなど、その優れた架装性は、知る人ぞ知るeキャンターの特徴だ(ePTOはメーカーオプションとして設定)。
EVならではの用途や実証も検討
港区では、小・中学校や幼稚園での出前講座や区民まつり(初公開は本年度の区民まつりで行なわれた)での広報展示といった従来からの用途に加えて、災害時には外部給電装置による非常用電源としても活用する考え。
また、3代目みえる号を用いてのEV実証実験も行う方針で、区内でのEVによるごみ収集に関する走行データを収集、今後導入する際の検討資料にするという。
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