かつては大勢の来場者で賑わい、クルマ界のビッグイベントとして認知されていた自動車ショー。しかし、ここ10〜20年で状況は激変し、変化、場所によっては開催見送りされるケースも出てきた。その最新事情を考察してみたい。
文/写真:越湖信一
■自動車イベントの華であったモーターショー
デトロイト、ジュネーブ、フランクフルト、パリ、東京で開催されるモーターショーを「5大国際モーターショー」とかつて呼ばれていたのをご存じの方もおられるであろう。
これらモーターショーはニューモデル発表の場として重要な役割を果たし、多くの自動車メーカーが豪華なスタンドを構えた。
スクープを恐れて極秘裏にニューモデルが会場へと運び込まれ、プレスディには記者たちが押し寄せる。一般公開日には多くの人々が長蛇の列を作り会場は熱気に溢れた。
しかしこのところのモーターショーはどうであろう。
テーマが適切に設定されたエディションはそれなりに集客できるとしても、そんな満員御礼はごくまれであり、海外のモーターショー情報を大きく取り上げるメディアも多くない。
現に私たちジャーナリストもモーターショーのために海外へ出向くことは少なくなってしまった。かつて胸を躍らせたモーターショーの存在が変質してきたのにはいくつかの理由がある。
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■なぜモーターショーは縮小していったのか?
一つにメディアの多様化、SNSの浸透によりモーターショーという場でなくても情報発信ができるようになったということ。
逆にモーターショーという決まった期間に皆が情報を発信することで、メディア枠の取り合いとなってしまうという弊害も顕著となった。
だから、ニューモデルを敢えてモーターショーの直前などという別タイミングで発表したりするこブランドもあった。
ラグジュアリーブランド、たとえばフェラーリなどは自ら顧客を招待するプライベートモーターショーを開催するようになったりと、ニューモデル発表の場としての価値が変化してきたのだ。
二つ目に、メーカー側からも大規模なスタンドを年に何回も設けることは経済的にも負担となるし、サステナビリティという面でも逆行するという考え方も生まれた。
ごく短期間のイベントのために莫大な資源が消費されるのは企業の姿勢として問題となるのだ。
三つ目として、顧客のクルマに対する志向性の多様化が挙げられる。
クルマをハードウェアとしてだけでなく、ライフスタイルとして捉える。
モータースポーツ、キャンプ、コンクールデレガンス、クラシックカーイベントなど多様化、細分化が進み、モーターショーというクローズドのスペースで基本的に開催されるイベントではカバーしきれなくなってきたという点だ。
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■開催されなくなったジュネーブモーターショー
5大モーターショーのひとつ、ジュネーブモーターショーが本拠スイスでの開催を断念したというニュースが去る5月に流れた。
ジュネーブモーターショーはスイスというカ―ブランドを持たない国で開催されることもあり、ニュートラルなスタンスで開催される、モーターショーの中でもユニークな存在だった。
だから他のモーターショーでは見ることのできないスタートアップの少量生産メーカーがスタンドを構えたりする。筆者もこのモーターショーだけは欠かさず通っていただけに非常に残念だ。
ジュネーブのようなニッチなイベントであっても、前述したモーターショー衰退のトレンドからは逃れることができなかったのだ。
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■今後のモーターショーはどう変化していく?
では自動車メーカーはこういったリアルなブランド発信の場を捨て去ってしまったのかといえばそうでもない。
北米で開催されるカーマニアの祭典であるモントレーカーウィーク(ペブルビーチコンクールデレガンスで有名)にはラグジュアリーブランドがテンポラリー・ショールームを構えたり、ザ・クエイル・ア・モータースポーツギャザリングというペニンシュラグループが主催するアウトドアミーティングには各ブランドがスタンドを構え、メディア向けのプレスカンファレンスまでも行う。
まさにアウトドアモーターショーである。
また、かつてピニンファリーナやジウジアーロなどが毎回新しいカースタイリングの提案を行ったトリノモーターショーは2000年を最後に開催中止してしまったが、近年トリノ市街を活用してカーデザインに焦点を当てつつも、アウトドアイベントとして復活した。
この二つの例でも分かるように基本的にアウトドアがキーワードであり、顧客のターゲットを絞ったカーイベントが従来のモーターショーを継承するという流れを見ることができる。
東京モーターショーも昨年ジャパンモビリティショーとして再スタートを切った。
私たちクルマ好きとしては、こういったモーターショーが新しい形で生き残っていくことを祈りたい。
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