首都高速道路株式会社の調査によると、2023年度に発生した首都高における交通事故のうち、雨天時に発生した死傷事故は、晴天時と比較して約4倍にもなったそう。
雨が多い季節といえば「梅雨」ですが、秋雨前線や台風など、秋も雨が多い季節。これからの季節に知っておきたい、雨の日の運転のポイントをおさらいしておきましょう。
文:吉川賢一/アイキャッチ写真:Adobe Stock_DG PhotoStock/写真:Adobe Stock、写真AC、首都高速道路株式会社
雨の日はスリップすることで、施設接触事故を引き起こしやすい
制動距離が伸び、視界も悪くなることから、交通事故が発生しやすくなる雨天時。首都高の調査では、2023年度に発生した1時間当たりの事故件数を天候別にみると、側壁等に衝突する施設接触事故は晴天時が0.14件/時間であるのに対し、雨天時は0.92件/時間と約7倍、死傷事故は晴天時が0.07件/時間であるのに対し、雨天時は0.27件/時間と、約4倍にもなったそう。
事故形態別では、追突事故がもっとも多いのは雨天時も雨天時以外も変わらないものの、雨天時は施設接触事故が多く、なんと雨天時以外の2倍以上。雨天時の事故の3割以上が、施設接触事故だったそうです。
これは、雨天で路面が濡れている状況でスピードを出したことでスリップしてしまったことが原因だと考えられます。実際に、当該調査結果での雨天時の施設接触事故のうち、約6割が60km/hを出していたそう。約8割の区間で制限速度が50km/hもしくは60km/hである首都高においては、高い速度だといえます。
路面の状況を確認しながら、スピードは決して出し過ぎないこと
雨の日の運転でもっとも恐ろしいのが、「ハイドロプレーニング現象」です。ハイドロプレーニング現象とは、タイヤと路面との間に水の膜ができることでタイヤが地面から浮きあがり、クルマが制御不能となる現象のこと。特に高速走行時に起きやすく、いったんハイドロプレーニング現象に陥ってしまうと、ハンドルもブレーキも制御不能となってしまうため、ドライバーは、車速が自然と落ちてグリップが回復するまで待つことしかできません。
タイヤの溝がしっかりあれば、トレッド面に刻まれた溝から排水ができるため、タイヤは路面をとらえることができますが、車速が高いと排水が追い付かなくなり、たとえ新品のタイヤであっても、ハイドロプレーニング現象を引き起こします。また、路面の水が多かったり、タイヤの溝が少なかったり、空気圧が不足していたりしてもハイドロプレーニング現象は起きやすいです。
ハイドロプレーニング現象が起きないようにするには、まずは速度を落とし、深そうな水たまりは避けること。どうしても水たまりを避けられない場合は、アクセルペダルから足を浮かし、ステアリングを真っすぐに持って、惰性で走り抜けることで、ハイドロプレーニング現象は避けることができます。とにかく雨の日はスピードを出しすぎないことです。
タイヤは4輪すべて、かつ接地部全面確認すること
ただやはり、日ごろからタイヤの状態をしっかりとチェックしておくことも重要。タイヤの残り溝は、運転の仕方や日常使う道路の路面状況などの影響で、4輪すべて同じ状態ではなく、確認しやすい「前右輪」だけをみて「まだ大丈夫」と思っていたら、実は前左輪にはスリップサインが…ということもあり得えます。
また、タイヤは内側もしくは外側だけがすり減ってしまう「片減り」を起こすこともあります。特に内減りは、外から確認するだけではわかりにくいため注意が必要。道路運送車両の保安基準では、四輪自動車はタイヤの接地部の全幅にわたり、滑り止めについている凹部のいずれの部分においても1.6mm以上の深さを有すること、と定められています。心配ならば専門店で確認してもらうといいでしょう。
そしてもちろん、視界確保のために、ワイパーゴムやワイパーブレードの劣化、ガラスに油膜がないことなども、日ごろから確認しておきたいところ。特にこの時期は夏の強い日差しで、ワイパー劣化が進んでいることも考えられます。一度念入りにチェックしておくようにしてください。
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雨の日の運転は視界が悪くなり、路面が滑りやすく、制動距離も伸びるため、雨が降っていない時よりも慎重な運転を心掛けないと、運転に慣れた人でも、思わぬ事故を引き起こしやすいです。いつも以上に車間距離を十分に取り、スピードは出し過ぎず、早めのやさしいブレーキを心がけるようにしましょう。
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