全国の大学で日々活動する自動車部を取材するこの企画。今回は千葉工業大学の自動車部にお邪魔した。この企画2校めの理系大学となる。部員の個人車は多種多様だが、試合車は他校からウワサされるほど○○ひとすじだった!?

※本稿は2024年9月のものです
文:奥野大志/写真:大石博久、マツダ、スズキ、ホンダ、日産
初出:『ベストカー』2024年10月10日号

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■そもそも「自動車部」ってナニ?

千葉工業大学自動車部のみなさん。部員数は30名。取材当日に集合可能な部員たちが集まってくれた

 自動車部はジムカーナやダートトライアルなどに参加する、大学公認の“学生レーシングチーム”。野球部や陸上部等と同じ体育会に属し、主に全日本学生自動車連盟(学連)主催の競技に参加しています。

 個人でクルマを所有し、ドライビングテクニックや整備技術を磨いている人も多く、いろいろなタイプのクルマ好きが集まっています。

●千葉工業大学自動車部活動内容

・正式名称:千葉工業大学体育会自動車部
・創部:1947年(昭和22年)
・部員数:30名(2024年取材時)
・保有車両台数:4台(試合車&練習車)
・活動場所:茜浜運動施設内ガレージ

■ロボットや宇宙の研究で知られる理系大学

取材当日、個人車でガレージにやってきた部員のみなさん。丹精込めて作り上げた愛車たちはどれも魅力的

 以前取材させていただいた芝浦工業大学に続いて、今回も理系の大学! 今回はロボットや宇宙空間の研究で知られる千葉工業大学です。

 千葉工大は1942年(昭和17年)に設立された興亜工業大学をルーツとする大学。千葉県習志野市内にある津田沼と新習志野の2カ所にキャンパスを構えており、自動車部のガレージは新習志野キャンパスから歩いて行ける、茜浜運動施設内にあります。

 正門を抜けてガレージに向かうと、部員たちの個性あふれる個人車が目に入ってきました。

 スイスポやデミオ、ロードスターなど、格安で楽しめる定番モデルが揃っており、つかみはOK。ガレージ内にはジムカーナ仕様のインテグラタイプRとシビック、ダートラ仕様のヴィッツとスターレットターボの試合車4台が鎮座しており、勝ちを狙えるラインナップです。

 インタビューに対応いただいたのは、前主将の宮澤薫さんと現主将の三橋拓実さんの“新旧主将コンビ”。宮澤さんは現在、副将として三橋さんを支えています。

「千葉工自動車部は現在、総勢30名で活動しています。活動日は月曜日から木曜日の16時から21時です。試合車の整備を行うほか、週末はジムカーナ場やダート場に遠征し、走行練習を行っています」(三橋さん)。

 千葉工自動車部が参加している競技は主に学連主催のジムカーナ、ダートラ、フィギュアの3つ。これらに加え、2023年から軽耐久に参戦。

 取材日は2024年8月の全日本学生ダートトラを間近に控えた平日。シーズン真っただ中で、走行練習は選手中心、オフシーズンは選手以外と、メリハリをつけた活動を行っています。

 「選手選考には学年問わず、立候補した人全員が参加できます。速い順で選手3人と補欠2人を決めていて、2024年は2年生がダートのドライバーに選出され、優勝しました。

 ただ、整備しない者は乗るべからずというのが部の方針。日々の整備に参加することと、選考会までの国内Bライセンス取得が条件です」(宮澤さん)。

 実際に整備の様子を取材させてもらいましたが、先輩が後輩を指導しながら作業にあたっており、いかにも自動車部という雰囲気。作業中は真剣そのもので、整備を重視する千葉工自動車部の姿勢を強く感じます。

■「千葉工は畑からスターレットが生えてくる」

ガレージ裏には千葉工大自動車部が所有する部品取り車が。スターレットの多さがとにかく目立つ

 そんな千葉工自動車部の大きな特徴といえるのが、スターレットターボをダートラ用の試合車として長年使ってきたところ。新規定導入により、本番車の役目は終えていますが、練習車としては現役です。

「今年(2024年)の初めには8台のスターレットがありました。OBの寄贈もあり、今でも新たな車両が入ってくる状態で、直して新人戦で使おうかと考えてます。他校から“スターレット大学”と呼ばれています」(三橋さん)。

 スターレット大学(笑)。実は筆者も他校の自動車部から「千葉工さんは畑からスターレットが生えてくる」と聞いたことがあります。インテグラやシビックのタイプRが全盛の時代に、なぜ、スターレットターボを使い続けてきたのでしょうか?

「ホンダ車と比べて安くパーツが入手でき、整備もしやすいからです。ターボ車ですが、VTECのような複雑な機構もないので、不具合が出た際の原因追及もしやすいです」(宮澤さん)。

 とっても自動車部らしい理由です。ご多分にもれず、千葉工自動車部も予算の確保には苦労しており、部費を値上げしたほか、ジムカーナ用のインテグラタイプRのドライブシャフトをアメリカから輸入するなど、涙ぐましい努力をしています。

 さらにいうと、新たなにダート用の試合車にヴィッツRSを選んだ理由も元から保有しているスターレットの部品がいろいろ使えるなどのメリットがあったからで、合理的かつコスパを重視した活動が千葉工自動車部の真骨頂といえます。

■モチベーションの高さも強み

ガレージにはマフラーだけでなくエンジン、ホイールのストックがゴロゴロと!

 じゃあ、成績はどうなの? という声が聞こえてきそうですが、ヴィッツRSで初めて出場した今年(2024年)の全関東学生ダートラは見事優勝(新規定・男子の部)。個人でもワンツーを獲得(同)と、最高のスタートをきっています。

 スターレット大学という愛称は、いい思い出になっていくと思いますが、新たな時代に向けて変化の途上にあるのが今の千葉工自動車部。今度はどんなニックネームで呼ばれるのか、今から楽しみでなりません。

「千葉工は強いと言われるのが目標でもあるので、すべての大会に全力で挑みます。ハングリー精神を持ち、全日本の総合杯をとりたいですね」(宮澤さん)。

 余談ですが、新習志野キャンパスには学生が利用できる工作センターがあり、そこにシリンダーヘッドを持ち込みヘッド面研した猛者がいたとか。

 思わず笑ってしまう工業大学ならではのエピソードですが、このモチベーションの高さも千葉工自動車部の特徴です。

*   *   *

 全日本学生ジムカーナ(鈴鹿サーキット)、千葉工自動車部は団体18位でした。2025年のさらなる飛躍に期待しています!

■自動車部員の愛車聞き込み大調査

●マツダ デミオ 宮澤 薫さん(先進工学部4年)

宮澤 薫さん(先進工学部4年)

 2011年式の3代目デミオの後期型、ガソリンの1.5Lエンジンを搭載したグレードに乗っています。デミオを選んだ理由はジムカーナに出場したいのと、マツダがとても好きだから。非常に軽量で扱いやすいうえに年式も新しく、パーツも意外と豊富。さらに本体価格も安いので、自分の理想にマッチしました。

●スズキ スイフトスポーツ 三橋拓実さん(工学部3年)

三橋拓実さん(工学部3年)

 自動車部の友人から買ったZC31に乗っています。安価なうえにロールバーも組んであり、ダートに興味があったので買いました。スイスポはクセがなくて乗りやすく、パーツが安くてたくさんあるので、ダートをやりやすいです。最近、ダートで横転したのですが、みんなに手伝ってもらい1週間で復活しました。

●ホンダ インテグラタイプR 柴山 麟さん(工学部3年)

柴山 麟さん(工学部3年)

 他校の自動車部の先輩から買いました。このクルマを選んだ理由はモータースポーツが好きで、レースを見ているうちにホンダが好きになったからです。ちょうど免許を取った頃に自動車部のコミュニティで売りに出ていたので買えました。エンジンのレスポンスがすごくよくて、踏んでいて楽しいです。

●日産 プリメーラ 飯野健介さん(社会システム科学部2年)

飯野健介さん(社会システム科学部2年)

 自分はJTCCが大好きで、それに出ているクルマで比較的買えそうな車種を探したらP11になりました。FFでスポーツ走行しているとギュッとアンダーステアが出ますが、このクルマはジワッと出るのですごく乗りやすいですね。一番気に入っているのはパワフルなエンジン。4000回転からの盛り上がりが好きです。

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