斬新なデザイン、こだわりまくった素材、小さいのに走りも秀逸と、登場直後から高い評価を得たBMWのコンパクトBEV「i3」。2022年の販売終了までに20万台以上を売り上げはしたが大ヒットまではいかず…。まだまだ中古車でも手に入るこのユニークな時代を先取ったクルマを今改めて振り返ってみたい。

文:藤野太一 写真:BMW

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■BMWの中核となる「iシリーズ」の初手としてデビュー

全長3999×全幅1775×全高1578mmという小さいボディに先進的なデザインを組み合わせたi3。新車価格はデビュー時で約500万円(レンジエクステンダー仕様が550万円)。

 BMW i3は、2014年に発売されたブランド初の量産電気自動車。またいまに続く大都市における持続可能なモビリティを提供するBMWのサブ・ブランド「BMW i」の第一弾という位置づけでもあった。

 そのすごさはまず革新的なボディ構造にある。

 ライフドライブ構造と呼ばれる車体の基本構造は、パワートレインなどを収めるシャシーの役割を果たすアルミニウム製のドライブモジュールと、乗員などが搭乗するライフモジュールという2つのモジュールにより構成されている。

 量産車として初めてCFRP(炭素繊維強化プラスチック)を基本骨格に採用し、徹底的に軽量化。電気自動車ながらわずか1260kgの車両重量を実現していた。

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■時代に合わせてサスティナブルを強烈にアピール

 また生産工程においても、いまにつながる先進的な取り組みを行っていた。生産工場であるライプチィヒ工場では従来に比べ消費エネルギーを50%、仕様する水の量を70%削減。また工場の敷地内に4機の風車を設置し、生産用の全電力を再生可能エネルギーで賄っていた。

 CFRPを生産している米国ワシントン州のモーゼスレイク工場も全電力を地元の水力発電でカバーし、CO2排出ゼロを達成。

 さらにインテリアで使用されるレザーには牛皮のなめし剤として従来廃棄されていたオリーブの葉の油出物を有効活用。また、インテリアに使用するプラスチックの25%には、リサイクル材料を使用。

 ダッシュボードやドアパネルの一部に天然素材のケナフ麻の繊維を採用するなど、ライフサイクル全体において持続可能な製品となっていた。

ドアはいわゆる観音開き。車内デザインもi3独自のものとし、BMWの力の入り方が随所から伝わってくる仕上がりになっていた。

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■日本では圧倒的にレンジエクステンダー仕様が人気

 ラインアップとしては、ピュアな電気自動車と発電機として2気筒の小型エンジンを搭載したレンジエクステンダーの2種類があった。

 2014年に登場した初期モデルは、最大出力170ps、最大トルク250Nmを発生する電気モーターおよび総電力量22kWhのリチウムイオン電池を搭載し、一回の充電で、通常で約160km、ECO PRO(エコ・プロ)モードで約180km、ECO PRO+(プラス)モードなら約200kmの走行が可能。

 レンジエクステンダー仕様の航続距離は約300kmだった。また急速充電はCHAdeMO方式を採用。機械式駐車場の利用が可能となるよう全高1550mmに収められるなど日本市場への配慮も行き届いていた。

 2016年にはバッテリーの総電力量を33 kWhにアップ。航続距離を50%以上延長。

 さらに2018年にはバッテリー容量を、さらに約30%拡大し42kWhに。一回の充電走行可能距離は360km(WLTCモード)、レンジエクステンダー仕様では466kmを達成。長距離ドライブでも不安なく使えるほど実用性を高めた。

初期モデルは通常モードで160kmの航続可能距離となっていたため、最新モデルとの差は大きいが、レンジエクステンダー仕様であれば2022年現在でも問題なく使用できるだろう。

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■BMWの本気が窺えるクルマだった

2022年に生産が終了したが、現在中古車相場では100万円以下、レンジエクステンダー使用でも100万円前後で購入が可能となっている。

 BMW i3は、開発、生産、リサイクルまでトータルでサステイナビリティを追求したモデルだった。ただ志が高いだけではなくBMWの特徴である50:50という理想的な重量配分と後輪駆動にもこだわっていた。

 軽量化と低重心化によってもたらされるドライビングダイナミクスは、ユニークな外観からは想像もつかないほど痛快なもの。

 新しい時代の駆けぬける歓びを実現していた。日本市場ではピュアEV仕様はほとんどなく、ほとんどがレンジエクステンダー仕様だが、中古車市場ではまだ程度のいいものが見つかる。

 世界的にハイブリッドが再考されているいまこそ見直したい、魅力にあふれたモデルだ。

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