ガソリン価格の高止まりが続いている昨今、燃費に対してシビアに対策している人は少なくないのでしょうか。無駄な加減速をしないようにしたり、余計な荷物を載せておかないようにしたりと、クルマの燃費をよくする対策はいくつかありますが、低燃費タイヤにはき替える、というのもそのひとつ。ただ、「低燃費タイヤ」というざっくりした名称に疑念を持っている人は少なくないでしょう。はたして、低燃費タイヤとはなにか、普通のタイヤと何が違うのか、ご紹介しましょう。
文:吉川賢一/アイキャッチ画像:Adobe Stock_beeboys/写真:Adobe Stock、写真AC、BRIDGESTONE、JATMA
クルマが走行しているとき、タイヤにはエネルギーロスが発生している
クルマの「走る・曲がる・止まる」という基本性能を支えるために、もっとも大切な要素であるタイヤ。タイヤが路面にしっかりとグリップすることで、クルマはコーナーをスムーズに曲がったり、短い距離で止まったりができるわけですが、このときタイヤには「転がり抵抗」という、クルマが進もうとする力に対する抵抗が発生しています。
タイヤの転がり抵抗は、タイヤが変形することによるものと接地摩擦によるもの、そして空気抵抗によるものと3つに分類されますが、タイヤが変形することによるものがもっとも寄与が大きく、タイヤの転がり抵抗のうち9割を占めるといわれています。地面からの入力をいなし、接地荷重を地面にかけてグリップを得ているタイヤは、変形しながら(たわみながら)回転をしていますが、たわむことで運動エネルギーの一部がゴム内部で熱エネルギーに変換されてタイヤが発熱、これがエネルギーロスとなり、転がり抵抗となってしまっています。
普通のタイヤとはゴム素材が違う
このエネルギーロス(転がり抵抗)を減らすことができれば、同じ燃料消費でより長い距離を走行できるようになり、低燃費となるわけですが、エネルギーロスを抑制しようと、タイヤ空気圧を過剰に上げたり、サイドウォール構造を強固にして転がりやすい設計にすると、グリップ力が弱まってしまい、クルマが走る・曲がる・止まるという性能(主にウェットグリップ性能)が発揮できなくなります。
そこで着目されたのが、コンパウンド(ゴム材料)の改良。昨今の低燃費タイヤは、このコンパウンドを改良することで、たわみによる発熱を抑制して転がり抵抗の低減を実現しています。
たとえばブリヂストンでは、ウェット向上ポリマーを導入した「ナノプロ・テックゴム」を採用し、これにモータースポーツ用タイヤ開発で培ったグリップ向上技術を融合したことで、業界初となる低燃費タイヤグレードの頂点「AAA-a」を獲得しています(2012年より製造開始)。
「低燃費タイヤ」とよばれるには明確な基準がある
ただ、普通のタイヤよりもエネルギーロスが少ないタイヤであれば、どんなものでも「低燃費タイヤ」とよべるわけではありません。日本自動車タイヤ協会(以下JATMA)は2010年に、低燃費タイヤに対して明確な基準を設けており、転がり抵抗性能が「A」以上、かつ、ウェットグリップ性能が「a~dの範囲にあるタイヤを「低燃費タイヤ」と定義しています。
転がり抵抗性能とウェットグリップ性能、どちらか片方がこの等級から外れても低燃費タイヤとよぶことはできず、グレーディングシステム(等級制度)に基づいて、「転がり抵抗性能」と「ウェットグリップ性能」の等級分けをラベル表示するように業界自主基準を設けています。
タイヤ販売店などに並ぶ交換用の低燃費タイヤに、一目でわかるグリーンのラベリングが掲示されているのを見たことがあるかと思いますが、一般消費者に分かりやすく示すため具体的な数字は伏せられています。
どれがいいかわからないというときは、ひとまず転がり抵抗係数「A」以上のものを選ぼう
低燃費タイヤは、高度なテクノロジーを導入しているぶん、価格がやや高めに設定されてはいますが、燃費がよくて高い安心感が得らえるタイヤを選びたいというニーズにこたえるタイヤとして、世界中に普及しています。どれにしたらいいかわからないという場合は、ひとまず転がり抵抗係数「A」以上のものを選ぶのがお薦め。参考になれば幸いです。
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