自動車評論家の松平氏、阪神高速の合流が怖いらしい。だもんで阪神高速が近づくと自然と動悸が早くなってしまうんだそうだ。これってまるで「パブロフの犬」状態。そんなクルマ界の「パブロフの犬」を探してみました!(本稿は「ベストカー」2013年3月10日号に掲載した記事の再録版となります)

TEXT/渡辺陽一郎、松平智敬、編集部

■スポーツカーを見ると、ついエンジン音を聴きたくなる

 例えば、販売店で超格好いいスポーツカーが展示されているとつい目がいってしまう。そして、その後に思うのが「どんなエンジン音なんだろう!?」とつい音を聞きたくなること。みなさんにも、心当たりありますよね~? これぞ“クルマ版パブロフの犬”の最たるもの。

 フェラーリやマクラーレン、さらにはLFAがそこに止まっているだけで、「エンジン音、聞かせて~!」となるもの。今回、撮影用にマクラーレンを借りてきた時、編集部でも「音はどんな感じ?」とまっさきに聞いたもんです。

フェラーリF12ベルリネッタ、サウンドにKOされる一台

■新型車が登場すると、まずエンジンがどんなものか気になってしまう

 エンジンつながりで、これもつい気になる存在。新型車登場と同時に新型エンジン搭載となると、どんなエンジンでどういう性能があるのかッ!? とエンジン開発は各社ドカンと予算をつぎ込んでいるだけに、つい知りたくなるもんです。

 そして、「2Lだから、今度出るあのクルマにもこのエンジンを積むに違いない」などと妄想が湧き出ることもよくある話。逆に、古いエンジンが流用だったら、「な~んだ」と肩を落とすことも、よくある話で……。

■高級スポーツカーが走っていると、つい運転席を見てしまう

 プリウスなど頻繁に見かけるクルマなら運転席はまったく気にならないが、フェラーリやアストンマーチン、ベントレーなどが走っていようもんなら、どんな人がオーナーなのか運転席がホントに気になる(浅ましくてすみません)。

 超高級車の場合、ネクタイまで高級に見えてくるから不思議(実際高級品なんだろうけどね)。また、スポーツカーの場合、意外と70歳代などご年配の方が運転席に座っている場合が多いですよね。

■阪神高速道路で合流が近づいてくるとかなりドキドキする

 阪神高速道路をたまに走る人や、地元の人でも慣れていない人は、この“パブロフの犬”的感覚、わかるはず。

 阪神高速の環状線は一方通行。その途中にある東船場JCTはたいへん複雑で、しっかり通る車線をキープしておかないと左右からの合流に巻き込まれ、思わぬ場所に連れて行かれてしまう。おかげで、今では阪神高速に入るだけで胸の鼓動が速くなります。(松平智敬/談)

ドキドキします(Photo by Ryusuke Komori@Adobestock ※写真はイメージです)

■助手席に座っている時、クルマが前のクルマに近づくと右足を突っ張ってしまう!

 ハンドルを握る人と自分とのブレーキタイミングが違う時に起こりがち。自分より遅く踏む人が運転している時、ブレーキを踏むように右足を突っ張っちゃうんですよね……。(松平智敬/談)

■高速でゼロクラウンを見るとついアクセルを緩めてしまう

 高速道路を走行中、後方から“ゼロクラウン”(12代目クラウン)がやってくると、ついアクセルをゆるめる……。こんな経験ないですか?

 高速道路を走る覆面パトカーは圧倒的にゼロクラウンが多いので(色は黒やシルバー、白がほとんどらしい)、法定速度内で走っていても(当然です)、ゼロクラウンを見かけると自然とスピードダウンしてしまう。

 渋滞の原因になったりして。ゼロクラウン、あんたってクルマは罪なヤツだぜ……。

この姿は速度抑制力があります

■後ろからメルセデスベンツがやってくると、思わず道を譲ってしまう。

 続いて高速道路関連ネタ。高速を走行中、バックミラーにメルセデスベンツのグリルが迫ってくると、思わず道を譲ってしまう。グイグイ走らせるオーナーがなぜか多い……というわけではなく、あのフロントマスクの威圧感に圧倒されるからつい道を譲ってしまう。

 低価格をウリにする新型Aクラスの登場で、イメージが多少は変わるのか? でも、フロントマスクの威圧感という意味では新型クラウンも、次の道を譲る“パブロフの犬”候補に入ったりして。(渡辺陽一郎/談)

威圧感のある顔というか堂々というか……

■男同士の会話が始まると、「愛車は何に乗っていますか?」になる

 昔はこれが常識で、40代以上の男同士の会話ではもちろん現在も。初対面の男同士がひとしきり会話をした後、「ところで、愛車は何に乗ってますか?」となる話の流れが定番化。これがきっかけで商談がまとまるケースも多いそうだ(たぶんね)。

 若者のクルマ離れといわれる現在では全世代共通ではないが、今後はそういう条件反射が起きてほしいものである。

■輸入車に乗るとウインカーとワイパーを間違える

 もう、これは鉄板ですな! ずっと国産車に乗っていると、たまに輸入車に乗った時にやらかしてしまうのが、ウインカーを出そうと条件反射的に右側のレバーを操作してしまうこと。すると、「ウィ~ン」とワイパーが右へ左へ……。担当なんて輸入車乗った時には絶対1回はやらかしますもん(←自慢気)。

 また、国産車に乗り続けているとウィンドウ操作ボタンやライト点灯スイッチが、一瞬どこにあるのかとまどうのも輸入車なのです……。

「ウインカー=右」と体が覚えているもので……

■右側通行の国でクルマを運転する時、ずーっと「右側右側右側……」とつぶやいてしまう

 欧米諸国の右側走行の国でクルマを運転する時、つい「右側右側右側……」とブツブツつぶやきながら運転してしまう。そんなことってないですか?

 特に交差点などで曲がる時は緊張感をもちつつ、「右側右側……」とつぶやきながら交差点を曲がらないと、日本にいるクセで条件反射的に左側を走行してしまう! なんてことになる。そそっかしい私の場合、「右側右側……」とつぶやくのは必須です(笑)。(渡辺陽一郎/談)

ロサンゼルスは右側右側……(Photo by kichigin19@Adobestock ※写真はイメージです)

■新車を買ったと言われると「値引きはいくら?」と聞いてしまう

 友人や会社の同僚などが愛車を買ったと言うと、「値引きはいくらだった?」とつい尋ねてしまう。値引きがまかり通っている日本人ならではの“クルマ版パブロフの犬”ですな。で、軽自動車で「20万円も値引きしてもらった」と聞くと、うらやましくてジェラシーさえ感じてしまう。

 また、かなり仲のいい友人なら、現金一括かローンなのかつい気になって聞いてしまうこともある。そんな時、「現金一括だよ」と威勢よく言われると、再びジェラシーを感じてしまう。嗚呼、小さい人間かも。

■赤信号で待っている間、歩行者用信号が早く赤にならないかな、とついつい見てしまう

 みなさん、これって「あるある!」じゃないですか? せっかちな担当だけですか?(必死)

 クルマを運転中、交差点などの赤信号で止まっている間、「歩行者用信号が早く赤にならないかなぁ」とつい歩行者用信号に目をやってしまう。歩行者用が赤になれば、車両用は青になるからね。ものすごく先を急いでいる時は、この条件反射ぶりが過度になる傾向に。ないですか? こんな経験? ほんとに ない? マジで?(←しつこい)

赤信号が待ち遠しいです(Photo by 正人 竹内@Adobestock ※写真はイメージです)

■前にダンプやバスが走っていると、無意識に車線変更をしてしまう

 車重が重く、土砂などを積んでいるダンプカーが前を走っていたら、ついつい車線変更をして先を急いでしまう。「お仕事、ご苦労さん」と思いながらも無意識のうちにね……。でも意外と速いダンプカーが走っている場合もあったりする。同様にバスが前を走っている場合も、先を急ぐあまりつい車線変更。ゆっくり走る寛大な心を持ちたいところだけどねぇ。

■新型車が登場するとエコカーでなくとも燃費が気になってしまう

 もうね、今の国産車はなんたって燃費なんスよ。ワゴンRがJC08モード28.8km/Lを打ち出して注目されたかと思えば、それに対抗するようにムーヴはMCで29.0km/Lを出してきた。わずか0.2km/Lでしのぎを削るほど、燃費値はユーザーの心をつかむ最も重要な要素になってしまったわけだ。

 そんなわけで、新型車が登場すると条件反射的に、「燃費はなんぼ?」と気になるわけです。これぞ、“パブロフの犬”。

 さらに、軽やコンパクト、エコカーでないモデルでも燃費が気になる傾向になっており、86が出てもクラウンが出ても日本人は「燃費、燃費……」。ちなみに、クラウンアスリートは9.6km/Lという数値。

クラウンでも、スポーツタイプでも「燃費はなんぼ?」とつい聞きたくなる

■中古車店で前の愛車と同じ車種が展示されていると「俺のクルマかも?」と思ってしまう

 自分が以前乗っていた愛車。時間が経過してもそれへの愛着はなかなか薄れないもの。だから、ふと目をやった中古車店に乗っていた愛車と同じ車種が展示されていたら、「お、俺のクルマかも?」とついチェックしてしまう。みなさんも、きっと、経験ありますよね?

 また、これと同じようなことで、道路を走っているクルマが以前の愛車と色も型も同じに見えたら、「俺のクルマかも?」とつい目でそのクルマを追ってしまう。これも「ある、ある!」ですよね!

似たクルマがあるとつい眺めてしまう

■タクシーに車内向けカメラが設置されていると、運転手さんを必要以上に褒めてしまう

 ドライブレコーダーの車内版カメラを室内に設置し、犯罪抑止を図るタクシーが増えている。で、常にカメラに睨まれているため、つい運転手さんにおベンチャラを言ってしまう。「このクルマ乗り心地いいですね~」とか。日本人、カメラを向けられると悪い話よりいい話をしてしまいがち。(松平智敬/談)

■高速のSA/PAに立ち寄ると、お腹が空いていなくてもつい屋台を覗き込んでしまう

 これは渡辺陽一郎氏が話していた“クルマ版パブロフの犬”だが、確かに言えてます! 最近のSA/PAはレストランはもちろん外にある屋台もうまいものばかりで、なかには並ばないと食べられない店も。だから、それほどお腹がすいてなくてもついのぞいてしまい、タコ焼きや焼き鳥などをつい食べてしまうことも。「屋台は別腹」ということでしょうかね?

SA/PAの屋台はまるで食のワンダーランドやぁ!

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 ……さて、カーライフのなかで、つい条件反射的に行なってしまう“クルマ版パブロフの犬”をお届けしました!「ある、ある!」とみなさんの心当たりとなるネタ話もきっとあったはず。クルマと接していれば共通の習性が自然と身につくものです。

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