サンマの漁獲制限などについて話し合う国際会議が大阪で開幕しました。「安くておいしい」魚だったはずのサンマにいま一体何が起きているのでしょうか。

■北太平洋海域全体の漁獲量は10年で4分の1以下に

15日、大阪で始まった「北太平洋漁業委員会」。日本や中国、アメリカなど9つの国と地域が参加する国際会議です。15日から4日間開かれるこの会議で、重要なテーマになるのが『サンマ』です。

サンマはここ数年、歴史的な不漁が続き、日本では去年1年間の水揚げ量が、過去3番目の低さに。北太平洋海域全体での漁獲量はこの10年間で4分の1以下になっています。

専門家は、その背景についてこう指摘します。
【近畿大学 有路昌彦教授】「地球環境の影響が一番大きくて、サンマは海水温でいうと親潮、冷たい方の海域からやってくるので、その勢いが弱まった現在、生息の分布域が非常に狭まってしまっている」

さらに、日本には独自の悩みもあります。かつては日本が自由に漁業を行える水域(EEZ=排他的経済水域内)が、サンマの漁場の中心でした。ところが、黒潮の勢いが強まったことにより、暖かい海流が北上。サンマはより冷たい水を求めて移動し、漁場の中心は日本のEEZ外、各国が自由に漁をできる公海へ移りました。その結果、中国などもサンマを盛んにとるようになったのです。

サンマを守るため、去年には漁獲枠を25パーセント削減することで各国が合意。ことしの会議では資源の状況に応じた漁獲枠を自動で計算する新たなルールの導入が検討されますが、専門家は「日本の立場は難しい」と話します。

【近畿大学 有路昌彦教授】「サンマが商業的に価値のあるものだと他の国が思うようになっていますので、そもそも日本に回遊する前にとってしまおうと。日本が『漁獲量をみんなで減らそうよ』と言っても、それを『なんで聞かないといけないの』となる」

■価格高騰 去年、北海道根室市の初せりで“1kgあたり14万400円”

資源の減少で、価格にも影響が出ています。去年8月、北海道根室市で行われたサンマの初せりでは、1キログラムあたり14万400円と過去最高を更新。水揚げ量が少なく、すっかり「高級魚」となってしまいました。

江戸時代からサンマに親しんできたという紀伊半島。和歌山県の雑賀崎地区ではサンマを干物にして旨味を凝縮させた、「灰干し(はいぼし)さんま」が地元の名物として親しまれてきました。

こちらの飲食店でも、「灰干しさんま」を扱った定食が人気です。

【店の客】「塩味もきいてるけど、強すぎなくておいしかったです」
【店の客】(Qサンマは高いとスーパーなどで感じますか?)「感じます。最近よう買えへんから。こんな干物でもスーパーで(1匹)400円~500円ほど。(以前は)2匹入ってるのが300円ほどだった」

店のオーナーからは、悲鳴があがっています。

【わかうら食堂 駿河康史オーナー】「サイズが小さくなってきたり、値段も少しずつ上がってきているんで、年々上がってきてますね。もう大変困りますね。お客さんがけっこう期待していますし、最低でもいまの状況を維持していただけたらと思いますけど」

このままでは、将来サンマが食べられなくなってしまうのでしょうか。

■サンマ不漁の救世主?『サンマの養殖』研究中

そんななか救世主となるかもしれないのが『サンマの養殖』です。福島県の水族館「アクアマリンふくしま」では、世界で唯一とされる、サンマの養殖のための基礎研究が行われています。

水槽の真ん中に照明を設置することで、傷つきやすく、繊細なサンマが壁にぶつからないようにするなど工夫を重ね、最高で8世代つなぐこともできたといいます。

【アクアマリンふくしま 山内信弥さん】「サンマが海にいなくなったら養殖はできない。自然界のサンマ自体の資源枯渇を防ぐのが第一だと思います。ずっと資源が停滞している中では、補填するという形で養殖技術が生かされればと」

「庶民の味」であったはずのサンマの未来は、いったいどうなるのでしょうか。

■「子供や孫の世代に残していくため、政治リーダーの指導力求められる」

サンマの養殖に向けた研究が進められていますが、漁獲量減少への対応策の一つになるのでしょうか。

【関西テレビ 加藤報道デスク】「いま福島の水族館が日本で唯一のすごい養殖技術を持っているところなんです。サンマ養殖がなぜこんなに少ないかというと、養殖は価格の高い魚で行われるもので、マグロやブリなどで行われてきた。技術や開発のコストが上乗せされて店頭に並んだときに天然物と価格帯が変わらないものだったらいいんですけど、サンマはもともと価格の安い魚でした。そこに開発費などのコストがかかってくると売れないか、安く売れば開発費をペイできない問題があって、研究が進んでこなかった」

検討されている「漁獲枠」に関して、各国の思惑が働き、議論は難しいですね。

【共同通信社 編集委員 太田昌克さん】「共通の認識をどう広げていくかという話だと思うんです。まず一つには、サンマのとれるエリアが変わってるということは、人類全体が共通で取り組まなくてはならない地球温暖化との戦いだということですね。
それからサンマの価値が上がって、各国が公海上でとり始めてしまって、公共財である漁業資源を子供や孫の世代に残していけるのかっていうもう一つの重要な問題がある。私はもっと政治のトップリーダーがしっかりと関与して、アメリカも巻き込んで、中国とか韓国と、『未来に公共財を残していこうよ』という視点で、科学的なエビデンスに基づきながら共通の解を政治リーダーが求めていく、そういう指導力が求められている時期に入ってきていると思います」

現在、大阪で開かれている国際会議で、どんな対策がまとめられるのか注目したいと思います。

(関西テレビ「newsランナー」 2024年4月15日)

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