参院本会議=国会内で2024年4月12日、平田明浩撮影

 農政の基本方針を定める改正食料・農業・農村基本法が29日、参院本会議で与党などの賛成多数で可決、成立した。食料安全保障の確保を新たな柱とし、持続的な食料供給のため、生産コストの適切な価格転嫁を後押しする必要性も盛り込んだ。

 「農政の憲法」と呼ばれる基本法の改正は、1999年の施行以来初。改正法では、基本理念として新たに定めた食料安保について「良質な食料が合理的な価格で安定的に供給され、かつ、国民一人一人がこれを入手できる状態」と定義した。国内生産の拡大を基本としつつ、輸入相手国の多様化や備蓄により食料の安定供給を図るとした。

 また輸出を促進することで、農業や食品産業の収益向上を目指す。食料価格は需給や品質の評価が適切に反映され「合理的な費用が考慮されるようにしなければならない」とし、価格転嫁を促す姿勢も示した。

 環境と調和の取れた調達・生産から消費までの「食料システム」の確立も重視するとした。また、生産性や付加価値の向上で農業の持続的な発展を図ることも明記した。そのために取り組む政策として、多様な農業者による農地の確保や、農業法人の経営基盤強化、スマート技術を活用した生産性の向上などを掲げた。

 複数の目標を定め、政府が少なくとも年1回は達成状況を公表することも盛り込んだ。食料自給率や、輸入に依存する肥料や飼料の調達状況などを想定する。

 基本法はロシアのウクライナ侵攻や地球温暖化の進行、人口減少などで食料安保の確保が課題となる中、2022年9月に岸田文雄首相が見直しを指示していた。【福富智】

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