チョウザメの養殖と野菜作りを融合させた取り組みが行われている岩手県大船渡市にある「アクアポニックスパークおおふなと」。
この施設内には5つの大きな水槽が並び、ここでチョウザメを育てている。

「アクアポニックスパークおおふなと」では生育状況によって水槽を分け、約2500匹のチョウザメを育てている。
このチョウザメの水槽の奥に見えるのは野菜のエリアだ。

Q:野菜は何種類くらい?
テツゲンメタウォーターアクアアグリ 株屋進社長
「リーフレタス、サンチュなど5種類ほどの野菜を育てています」

行われていたのは土を使わずに野菜を育てる水耕栽培で、水で育てることでえぐみが抑えられ、柔らかい口当たりになるという。

Q:チョウザメと野菜は、どのようにして一緒に育てている?
テツゲンメタウォーターアクアアグリ 株屋進社長
「水耕栽培の水は、チョウザメの水槽とつながっているんです」

チョウザメの水槽と野菜を育てているエリアは隣同士で、2つのエリアはパイプでつながり水が循環している。

テツゲンメタウォーターアクアアグリ 株屋進社長
「チョウザメの糞や食べ残しを微生物によって肥料に変えて、こちらの水耕水槽の方に流しています」

チョウザメの水槽の水に含まれる糞や食べ残しが野菜を育てるための肥料となり、野菜が肥料を吸ってきれいになった水がチョウザメの水槽に戻っていく。
水は常に循環していて、排水がない仕組みになっている。

この水産養殖と水耕栽培を同時に行う仕組みは「アクアポニックス」と呼ばれ、環境に優しい未来型農業として注目されている。
この「アクアポニックス」は水の管理がとても重要だ。

テツゲンメタウォーターアクアアグリ 株屋進社長
「チョウザメが病気になっても薬が使えません。その薬が野菜に影響するかもしれないので。水をしっかり管理しなければいけないので、そこが一番苦労します」

チョウザメに影響があるため、栽培しているのは化学肥料や農薬を使用していない有機野菜だ。安全に食べられて、人にも優しい取り組みだ。

このアクアポニックスで栽培される野菜は一定の品質で安定した出荷が可能だ。
2024年の2月から野菜を仕入れているという宮古市の居酒屋に行ってみた。

居酒屋 暖 大通店 刈屋貴博さん
「水耕栽培によって安定した供給を得られるので欠品すること無く、お客様に常にグランドメニューとしてお出しできるのがメリットかなと思っています」

アクアポニックス農法で栽培されたリーフレタスや春菊などを使用したメニューを提供している。

居酒屋 暖 大通店 刈屋貴博さん
「春菊ってえぐみがあり、お客さんの好き嫌いもあるが、この水耕栽培によってえぐみが少なくなっているので自信もってお勧めできる。一度食べてもらったお客さんのリピートが凄く高いので、ありがたいです」

出荷と味の安定、有機野菜で安全安心、環境に優しい農業。
さらに施設がある場所にもポイントがある。

テツゲンメタウォーターアクアアグリ 株屋進社長
「この土地は元々、大船渡市の下水道施設の増築用地だった」

「アクアポニックスパークおおふなと」のすぐ隣は下水道施設で、ここは下水道施設の増築のために用意されたものの利用されていない場所だった。

テツゲンメタウォーターアクアアグリ 株屋進社長
「私たちは隣の下水道施設の維持管理もしている会社。この未利用地を活用できないかと考え、水に特化した仕事で何か貢献できないか検討していた時にアクアポニックスに出会いました。今は野菜の出荷になっているが、来年はチョウザメの肉、再来年はキャビアが出荷できるようになります。地元の企業とうまく協力し販売できばいいと思っています」

未来の食文化を支える新しい取り組みの今後に期待が高まる。

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