ケニアで撮影されたアフリカゾウの群れ=研究グループのジョージ・ウィットマイヤー教授提供

 野生のアフリカゾウは、個別の名前のようなものを使って仲間と互いに呼び合っている可能性があるとの研究成果を、米コロラド州立大などの研究グループがまとめた。英科学誌ネイチャーの関連誌で10日、論文を発表した。

 研究グループは1986~2022年、ケニアの国立公園でアフリカゾウのメスと子の群れで収録された469件の鳴き声を調べた。いずれも仲間に呼びかける際に発する「ランブル音」と分類される鳴き声だという。人工知能(AI)を使ってこれらを解析したところ、呼びかけ相手の個体によって音響の構造が異なり、どのゾウに向けられた鳴き声かが特定できたケースもあった。

 さらにゾウに録音した鳴き声を再生したところ、それぞれ自分にあてた呼びかけに強く反応し、内容を聞き分けている可能性が示唆されたという。一方、発声のどの部分が「名前」の要素にあたるのかはまだ分からないとした。

 イルカやオウムは、仲間が発する音をまねて呼び合うことがわかっているが、ゾウの場合は音の模倣に頼らずに、人間に近い方法で互いに呼びかけ合っていることがうかがえるという。また、ゾウが名前で呼び合うのは、長い距離を移動している時や、大人が子どもに呼びかける時に多かった。研究グループは「言語の進化を理解するうえで重要な意味を持つ可能性がある」とした。

 論文の共著者でコロラド州立大のジョージ・ウィットマイヤー教授は、密猟が後を絶たないアフリカゾウと会話できるようになるのは遠い夢だとしたうえで、「ゾウに『ここには来るな。来たら殺される』と警告できるようにしたい」と話している。【ニューヨーク八田浩輔】

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