県内でも、先日、今シーズンのイワシ漁が解禁され瀬戸内の初夏の味覚、小イワシを楽しめる季節がやってきました。
一方で、若者を中心に魚離れが進んでいます。新たなお鮨を考案するなど、瀬戸内の魚の魅力を伝えようとする鮨職人に密着しました。

繁華街から少し離れた広島市中区の一角に店を構える「鮨 黒郷(すし くろごう)」の店主・黒郷修さん。
鮨の世界に入って30年、独立して自分の店を持つまで県内の名店で修業を重ねてきました。

【「鮨 黒郷」店主・黒郷修さん】
「新鮮な小イワシが食べられる、生で食べられるのは広島だけなんですよね。小イワシが好きなんですよ。何にしてもおいしいじゃないですか」

広島県民が愛してやまない瀬戸内の初夏の味覚、小イワシ。
県内でも、先日小イワシ漁が解禁され、今シーズン最初の水揚げが行われました。
初日の小イワシは例年並みの大きさで1番船で取れた量は去年の2倍。

今年最初のセリでは1箱に7000円の値が付き、市場は盛り上がりを見せていました。

【広島魚市場鮮魚部・右近浩二次長】
「(販売を担当して)5年目の中だとこれほど豊漁だった年はない。ようやく上がってくれたんでほっとしています」

一方で、課題となっているのは若者の魚離れです。
こちらのグラフは、15歳から19歳が1日に食べている魚介類と肉類の摂取量を示したものです。
長く続いた食生活の変化によって魚介類の摂取量は肉類を下回っていて、減少傾向が続いていることがわかります。
小イワシをこよなく愛す黒郷さん、今回、新メニューを考案しました。

【「鮨 黒郷」店主・黒郷修さん】
「味噌と砂糖をお好みで入れてもらって。小いわしを「なめろう」にしたんですよ。ちょっと鮨にしてみようかなと。そのままでも美味しいけど、「なめろう」にちょっと変化球ですね」

どの家庭にもある味噌や砂糖で簡単に作れる「なめろう」。普段魚を食べる習慣がない若い人たちに魚料理を味わってもらいます。
若い世代に瀬戸内の魚の魅力をもっと伝えたい。
黒郷さんは県が取り組みを進めるプロジェクト「瀬戸内さかなブランド化推進事業」に参加しました。
このプロジェクトは、魚離れが進む若者の現状をなんとかしようと、瀬戸内の魚の魅力を発信し飲食店での食体験などを通じて、魚を食べる文化を若い世代に伝えていくことを目的としています。

【合同会社MHDF・片山拓実さん】
「若い世代においしい魚を食べてほしいという思いは」

【「鮨 黒郷」店主・黒郷修さん】
「若い世代、子どもとか若いカップルとか、夫婦に食べてほしい。子どもたちが大きくなってお父さんに連れてきてもらったよね、お母さんに連れてきてもらったよねっていう店にしたかった。代々親から子へその子どもが今度はお父さん、お母さんを招待してあげるように」

県は広島市内に県内屈指の技術を持つ漁師さんを招き、瀬戸内の魚に実際に触れてもらうイベントを開催します。さらに今後は、瀬戸内の魚の価値を広めるキャンペーンなどに取り組んでいく考えです。

【湯崎英彦知事】
「料理人の技術も含めて様々な人の手でおいしいものができていることがもっと認知されると、魚に対する関心が高まると思う。それは若者の魚食にもインパクトはあると思っている」

若者の魚離れが進む中、若い世代に本物の鮨の味を知ってほしい。

【「鮨 黒郷」店主・黒郷修さん】
「回転寿司が主流になってますよね。そうじゃなしに、本当のお寿司って言ったら失礼ですけどそういうお寿司を若い子に食べてもらいたい」

その思いを叶えるため、黒郷さんはこれからも握り続けます。

<スタジオ>
小イワシが美味しそうでした。まずは魚が美味しいということを若い人に感じてもらわないといけないですから、食べてもらう事が大事ですね。

【コメンテーター:広島大学大学院・匹田篤准教授】
「子供とか学生たちはお寿司大好きなので、本当に『魚離れ』なのかなという気もするが、県民としては小イワシの美味しさを多くの人に伝えないといけないと思う。お寿司屋さんはコミュニケーションの場所でもあるので、目の前で小イワシを料理をしてくれると真似したくなるし、それを更に別の人にも伝えたくなる。そのようにコミュニケーションが繋がるといいと思います」

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