岩手県西和賀町に「赤い妖精」と呼ばれる全国的にも珍しいイチゴを栽培している農家がある。
出荷できない規格外のイチゴを使った加工品の開発にも取り組んでいる。
豊かな自然を誇る西和賀町で収穫期を迎えた果物がある。「夏イチゴ」だ。
「夏イチゴ」を栽培している菊池伸也さんは、地域の「目玉」になるものを作りたいという思いでイチゴの栽培と加工を行う、その名も「めだま企画」を立ち上げた。
菊池さんが栽培した「赤い妖精」という品種のイチゴは、程よい酸味が感じられ、イチゴの味がダイレクトに口に届き、中まで真っ赤だ。
めだま企画 菊池伸也さん
「作ってるイチゴは甘さよりも果実味。果実の酸味と豊かさをしっかり表現したいと思い、土の上で育てる土耕栽培に今もこだわっている。雪解けの水をしっかり含んだ土から栄養を吸い取ったおいしいイチゴができると考えている」
プロスキーヤーを目指し県外でスキー関連などの仕事をしてきた菊池さんは、食材を自ら育てて加工する仕事に携わりたいと考え、実家がある西和賀へ戻り農業を始めた。
Q:夏イチゴ栽培しようと思ったきっかけは?
めだま企画 菊池伸也さん
「昔はたくさんの人がいる地域だったが、この地域の高齢化が進んで耕作放棄地が増えていた。その土地をどうにか利用して地域おこしができたらいいと考えた」
「昔、この地域ではイチゴが盛んに作られていた時代があり、なんとか残したいなと思い、イチゴを作ることにした」
冬になると農業用ハウスの高さを超えるほど雪が降り積もる西和賀町は、一般的に行われている冬期間のイチゴ栽培には向いていない地域だ。
しかし、菊池さんはその雪を活用した栽培を始めた。
めだま企画 菊池伸也さん
「1年目の栽培が終わった後に株をきれいに整理し、そのまま冬に雪の下にする。イチゴは冬眠をすると次の年に、さらに実をより多くつける性質があって、そうすることで春になると雪解け水を吸って、イチゴがより大きく育つ栽培法を確立した」
また、1年で使い終わっていた苗を2年使うことができ、栽培に使う資材もそのまま使えるので、植え付けにかかる人件費などが浮くようになったという。
イチゴの性質を利用することで圧縮できた資金と労働時間だが、解決すべき問題が他にもあった。
それは流通規格に合わず廃棄されるイチゴで、その数は多い時で総収穫量の約3割にも上る。
菊池さんは、規格外のイチゴを有効活用しようと新たな加工品を開発した。
それが「一途なイチゴバター」だった。
めだま企画 菊池伸也さん
「半分がうちのイチゴそして半分がバター。あと砂糖がちょっと。安定剤の代わりに寒天を使っている。(一途なイチゴバターに使っているのは)皆さんが知っている4つだけ」
「子どもがいるので親としてどういうものを食べてほしいか考えながら作ったのが始まり。添加物や香料が入らない安心安全なものを皆さんに食べてほしいと思い、このような形になった」
「一途なイチゴバター」は、イチゴそのものを食べているように口の中にイチゴが広がる。バターのまろやかさやイチゴのつぶつぶ感も感じられる。
生産から加工・販売までを手がける菊池さんは、先進的な農業経営者などを育成する「いわてアグリフロンティアスクール」を受講し、ビジネスとして成り立つ農業を目指している。
めだま企画 菊池伸也さん
「農業は仕事が大変だが、その割に収益が少ないということがあると思う。そういう大変な状況で、どんどん若い人が離農していく仕事になってしまった。ビジネス化をして収益を得ることによって、大好きな西和賀で生活できることが一番うれしい。この西和賀で頑張りたい」
様々な困難を克服しながらイチゴを育て、オリジナルブランドの加工品を生み出す菊池さんは、西和賀の発展と新たな農業経営を目指し、日々イチゴと向き合っている。
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