夏休みシーズンに動物園や水族館に行く人もいると思う。そこでピンク色が印象的な鳥“フラミンゴ”を見かけることもあるだろう。

6月頃がフラミンゴのベビーシーズン(提供:富士花鳥園)
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フラミンゴは毎年5月頃に産卵シーズンを迎え、30日ほど卵を抱えて温める。そして、6月頃がベビーラッシュとのことだ。静岡・富士宮市にある「富士花鳥園」では、4羽のヒナが生まれ、親のフラミンゴたちが子育てに奮闘しているという。

卵からかえったばかりのヒナはピンク色ではない(提供:富士花鳥園)

そんな卵からかえったばかりのヒナが、モフモフな灰色をしていることを知っているだろうか?

そもそもフラミンゴがピンク色なのは“食べているエサ”が理由。野生下では赤い色素を持ったプランクトンや藻を食べている影響で赤くなっている。

そこで富士花鳥園では、フラミンゴ専用のエサやオキアミを与えることでピンク色を維持している。このエサを食べないと色は薄くなっていくという。

大人と同じ色になるには約3~4年

では、ヒナはいつ頃からどのように赤くなるのだろうか?親と同じ物を食べるようになってからということ? 富士花鳥園・水鳥担当の鈴木有美さんに話を聞いた。


ーーフラミンゴのヒナはどのようにして赤くなっていくの?

灰色のヒナですが、“フラミンゴミルク”を飲むことで赤くなります。

口移しで“フラミンゴミルク”を与えるという(提供:富士花鳥園)

ーー“フラミンゴミルク”とは何?

食道の奥にあるそ嚢(のう)という器官でフラミンゴミルクが作られます。このミルクの成分は哺乳類のミルクとほとんど変わりません。異なる点は赤い色素が含まれているところです。ちなみに、そ嚢という器官は母親だけでなく父親にもあるのでオスもミルクをあげます。

液状のフラミンゴミルクを親から口移しでもらいます。受け取りやすいようにヒナのくちばしは短くまっすぐな形をしています。成鳥になるにつれて「くの字」に曲がっていきます。

ヒナのくちばしは短く真っすぐ(提供:富士花鳥園)

ーーなぜヒナの頃から赤くするの?

赤くないフラミンゴは異性とつがいになれなくなります。「白色の体=エサが食べられていない」と認識されてモテなくなります。

生後7カ月のフラミンゴ 灰色・白色の割合が多い(提供:富士花鳥園)

ーーどれくらいで赤くなっていく?

体が赤くなり大人と同じ色合いになるのには約3~4年かかります。

ちなみに、親はフラミンゴミルクを生後3~6カ月まで与えます。生後6カ月ごろの色合いは灰色~白色の割合が多いです。この時期は成長時期になります。生後約10カ月まで成長時期となりまして、成長時期が穏やかになって、成長が止まってからゆっくりと色が赤色になっていきます。

夫婦で協力して子育てする(提供:富士花鳥園)

ーーもしヒナが育児放棄などされたら、どうするの?

当園では人工育雛(じんこういくすう・人が親代わりとなり育てる)に切り替えます。動物の赤ちゃん用ミルクを与えて育てます。このミルクは赤色ではなく白色です。生後1カ月過ぎにはフラミンゴ専用のエサやオキアミを食べ始めます。


ーー人工育雛で白色ミルクを与えると、フラミンゴミルクを飲むヒナより赤くなるのは遅くなるということ?

成長は人工育雛の方が遅いですが、成長期に追いつきます。また、成長が止まった後から色が染まっていきます。そのため、赤くなる時期は同じくらいです。

人工で育てているヒナが1羽

富士花鳥園では現在、4羽いるヒナのうち1羽を人が親代わりとなって育てているという。このヒナは5月22日にかえった、2024年最初に生まれたヒナだ。

人工育雛のヒナ(提供:富士花鳥園)

フラミンゴの親は産座(卵を生む場所)を自分たちで作るが、その場所が完成する前に卵を生んでしまい、地面に転がってしまったのだそう。同園によると、地面に落ちた卵は“自分が生んだ卵”と認識できず、温めることはしない。そこで落ちてしまった卵を飼育員が採取し、人工で温めてかえしたという。

バックヤードで飼育しているという人工育雛のヒナ(提供:富士花鳥園)

バックヤードで飼育され、成長は他の3羽に比べると人工育雛のため少し遅めだそう。素直な性格で、エサを与えていた飼育員の後ろをついて歩き、時々一緒に園内を散歩に出かけているということだ。

子育て中のフラミンゴ(提供:富士花鳥園)

夏休みの8月頃までに見に行くと、フラミンゴのヒナたちは灰色に近い色合いの全長約40~50cmに成長しているだろうとのこと。体が大きくなると1回のエサを与える量も増え、長い時間をかけて与える。そのため運が良ければ、親がヒナに口移しでフラミンゴミルクを与えている姿が見られるかも知れないという。

夏休みに、灰色のフラミンゴのヒナを見に行くのも楽しそうだ。

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