特集は、中学生の「教師体験」です。キャリア教育の一環で長野県佐久市の中学校の生徒が小学校で教師の仕事を体験しました。教師を志す若者が減る中、将来その道に進む後押しになればとの期待も込められています。
■超青田買い!?中学生が教壇に
佐久平浅間小学校の3年生のクラス。
浅間中・山口穂高さん(3年):
「54ページを開いてください」
教壇に立ったのは浅間中学校の生徒です。
浅間中・山口穂高さん(3年):
「(授業で)わかりますって手を挙げてくれて、その時、本当にうれしかった」
教師の仕事を体験するこの企画。キャリア教育の一環ですが、ある「期待」が込められていました。
浅間中・市川大輔教頭:
「(教師を)経験してみたい、子どもたちと触れ合ってみたいという願いを実現してもらうテーマ。先生のなり手が少なくなっているというのは関心があって、こういう機会を通じて将来『先生っていいな』と思ってもらえる一助になれば」
思惑通りなれば、「超青田買い」とも言える取り組みです。
■教員採用試験志願者は減少傾向
近年、教員採用試験の志願者は減少傾向です。
2025年春採用される公立学校の教員採用試験が行われましたが、小学校教諭の志願者は585人。10年前と比べると約3割減っています。
かつて6倍を超えていた「倍率」は、3年前からは3倍を下回っています。3倍を切ると「人材確保の面で憂慮される事態」とされており、県教委も重く受け止めていました。
そこで志願者を増やすべく今回から、小・中学校の「併願制度」を導入、中途採用の「秋選考」も実施するなど、選考方法を見直しました。
■先生になってやりたいことは?
6月18日、浅間中―。
そうした中、浅間中では生徒の要望を受けて、2023年、小学校の協力を得て初めて教師体験を実施。今年も2年生と3年生9人から希望がありました。
浅間中・市川大輔教頭:
「先生ってどんな仕事しているのかを経験できるいい機会。行ったときに『こんなことしたいです』と言えるように準備して下さい」
1週間前の打ち合わせ。「やりたいこと」を付箋に書き出しました。
生徒:
「相談とか聞いてみたい」
子どもたちがわからないところを教えたい―。
浅間中・阿部沙織さん(2年):
「もともと小学校の先生になりたくて、この体験でもっと具体的に将来について考えられたらいいなと思って」
浅間中・浅野詩葉さん(3年):
「先生目線からどうやって教えのか、客観的に見てみたいと思って行くことにした」
3年生の山口穂高さん。両親の影響で教師の道に進んでみたいと考えています。
浅間中・山口穂高さん(3年):
「お父さんが先生で、お母さんが保育士で、その影響を受けて教師という職業に憧れを持ったので、一日だけなんですけど将来の夢に向かって一歩として、教えることの大切さを学んだり、やりがいや苦労や楽しさを学びたい」
■いよいよ「先生」になる小学校へ
6月24日―。
迎えた体験当日。
「おはようございます」
山口さんたち5人は母校の佐久平浅間小へ。
佐久平浅間小・志摩宏道教頭:
「将来、先生になりたいと聞いているので、きょうは『教師の目線』を大事にしながら一日、生活をしてみてください」
山口さんと遠藤大翔さんは小学3年生を担当。
まず学年集会で自己紹介。
浅間中・山口穂高さん(3年):
「3年生全員と仲良くなれるように、きょう一日よろしくお願いします」
浅間中・遠藤大翔さん(3年):
「きょうは先生という立場で一日学びたいと思います」
佐久平浅間小3年4組担任・竹内大教諭:
「できるだけやってみたいことがあれば、やりたいと思うので(言ってください)」
■一時間目はサポート役に
体験は生徒主体。中学校からは「なるべく生徒の自主性に任せてほしい」と小学校側に要望してありました。
1時間目は図工。山口さんは授業のサポート役に回りました。
せっかくの機会なのに遠慮したのでしょうか。
でも、1時間目が終わるとー
浅間中・山口穂高さん(3年):
「先生、次、漢字ですよね。漢字教えてみたいです」
3年4組・竹内大教諭:
「『化ける』という字を教えてみますか」
次の国語の授業では山口さんも漢字を教えることに。
3年4組・竹内大教諭:
「では(「死」を)『空書き』したいと思います」
担任の教諭が手本を示します。
児童:
「1、2、3、4、5、6」
■国語の先生に挑戦!
いよいよ、教壇へ。ちょっと緊張気味です。
浅間中・山口穂高さん(3年):
「恐竜好きな人も多いと思うけど、恐竜の化石ってわかるかな。化石の『化』って漢字です」
「みんなで空書きしてみましょう」
「1…」
児童:
「それで合ってる?」
児童から見たときの「鏡文字」がわからず戸惑ってしまいました。
浅間中・山口穂高さん(3年):
「最初、先生が見本を見せてくれたけど、子どもたちから見て書かなきゃいけなかったので、自分は逆に書かなきゃいけなかったので、そこが難しかった。やっぱり、先生ってすごいなと」
山口穂高さん(3年):
「みんなで(「両」を)空書きしてみましょう」
児童:
「反対でもいいよ」
「1、2、3、4、5、6…」
山口穂高さん(3年):
「OK!」
その後は、うまく教えることができた山口さん。
ちょっとほろ苦いデビューとなりましたが、児童の評価は上々でした。
授業を受けた児童:
「すこし間違えていたけど、教え方がうまくて、まるつけもうまかった」
「優しく教えてもらったからわかりやすかった」
■他の生徒は体育、ICTの先生に
他の生徒も緊張しながら教師を体験。
阿部沙織さんは1年生を担当―。
浅間中・阿部沙織さん(2年):
「猛獣狩りに行こうよ…」
体育の体つくり運動を児童と一緒にー。
浅間中・阿部沙織さん(2年):
「大変なところとか楽しかったところ含め形になってきたと思ったので、教員の仕事を目指そうと思うようになりました」
角田愛子さん、安原楓さんは2年生を担当―。
「ICT」のタイピングの授業をサポート。
浅間中・角田愛子さん(3年):
「思っていたよりいろんなことがハードで大変だったけど、楽しかったです。(将来の夢は?)まだ決まっていないけど、この体験を通して先生っていいかなって」
休み時間や給食も児童たちと過ごしました。
■先生になった感想は?
午後3時ー。
浅間中・山口穂高さん(3年):
「一日みんなと一緒に過ごしてみて、みんなからこっちに来てくれることが多かったし、自分自身うれしくてありがたかったです」
帰りの会:
「さようなら」
佐久平浅間小 3年4組担任・竹内大教諭:
「実際の現場の楽しさもあると思うんですが、大変さも感じることができたと思う。その道(教員)に歩んでくれるとうれしいなと思いました」
帰り際、小学校の元担任から声を掛けられました。
山口さんの元担任・工藤由里教諭:
「また7年後に同業者として先生、働いているかわからないけど、会おうね。きょうで終わりなんだよね、どうだった?」
山口さん・遠藤さん:
「楽しかった」
教師の仕事をじかに感じることができた1日。貴重な経験となったようです。
浅間中・山口穂高さん(3年):
「なにより疲れたけど、それより楽しくて。子どもたちが積極的にこっちに来てくれて、教える側もできたし、教えてもらうこともいっぱいあったから、とてもいい経験に。夢に一歩近づいた企画になった」
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