梅雨が明けいよいよ夏本番を迎え各地では夏祭りの準備が進められている。
祭りをさらに盛り上げるのが「神輿」だが、いま、その神輿の「担ぎ手不足」が深刻化している。現状や対策を取材した。
夏祭りシーズン到来 ことしも準備が進む一方…
大分県大分市の西新町天満社では、祭りで行われる神輿の巡行に向け本格的な準備が始まっている。西新町天満社では7月21日から25日にかけて夏季大祭が予定されている。
この祭りは約400年前から学問の神様として知られる菅原道真を祀るために始まったとされていて、この日は、祭りを運営する青年会のメンバー約20人が集まり提灯の組み立てなど準備が進められていた。
和気あいあいと準備を進めるメンバーだが、いま、どの祭りでも問題視されているのが神輿の「担ぎ手不足」だ。
「人口減少」「祭り離れ」…深刻な担ぎ手不足
大道町など13の町内の人たちで天満社の祭りをしているが、10年前と比べて参加者は半分以下に減少。
高齢化や人口減少に加え、新型コロナの影響で祭り離れが進んだことも原因だという。
天満社では少しでも「担ぎ手不足」を解消しようと2024年からポスターにQRコードを添付。
法被も貸し出し町内以外の人も気軽に参加できるように工夫している。
西新町天満社 成年総代会の佐藤政広会長は「伝統も大事だが今生きている地域の人たちがその伝統を少しでも身近に感じてもらえるようなことが、“守る守る”だとなかなか周りがついてこないご時世なのでなんとか(今の時代に)近づいていけたらと思う」と新しい取り組みへの思いを話した。
天満社はこのほか、長浜神社や若宮神社など市内5つの神社と協力体制を取り、それぞれの祭りの神輿の巡行を手伝い合うという取り組みも行っているという。しかし、それでも1日10時間近く練り歩くため人出は足りていない状況だという。
SNSなどを活用するにも年齢層が高いと浸透しにくい
この西新町天満社の祭りの青年会に唯一の20代として参加している柴田航宣さんは、小学5年生の頃から祭りに参加していたそうで、最初は参加賞のお菓子目当てだったという。しかし参加するうちに担ぎ手の魅力に気付き、いまではメンバーとして祭りを支えている。
柴田さんは「SNSなどをより活用すべきだが祭りの運営側の年齢層が高いためノウハウが浸透しにくい。まずは告知の方法を改善することが問題解決の第一歩になるのでは」と話している。
担ぎ手の負担軽減のためトラックに乗せて運ぶという対策も
また、このほか大分市内の別の神社では担ぎ手不足により、巡行の距離を縮める取り組みも行われている。
浜の市でお馴染みの大分市の柞原八幡宮では、鎌倉時代から3基の神輿を本殿から仮宮に運ぶ神事が行われている。
1基の重さは約600キロ。歩く距離は4キロほどとかなりの負担がかかるこの神事。
しかし神輿は数年前から巡行ルートの大半の距離をトラックに乗せて運んでいる。
主な理由は人手不足。昔は地域住民の人たちと協力しながら運んでいたそうですが、いまでは人も集まらず企業に協力してもらっているほか祭りの開催期間を短くするなどして対策をしている。
柞原八幡宮の長沢周一郎禰宜は「神輿は通る道が決まっていて、“必ずこの道を通ってお下りするんだ”とそこに鳥居が合ったりするから、そのようなこともあって途中でトラックに乗せたりしないと担ぎ手もばててしまうというところもあって、トラックをお願いしている。なかなか大変ではあるがそれは形を変えてでも、なるべく昔ながらの祭りを伝えていきたい。それが次の世代に繋ぐ私たちの仕事でもあるのでそこは頑張っていく」と思いを話してくれた。
20年前と2023年の県内の人口を比較すると、若者を中心に減少傾向にあり全体では約11万人減少している。
祭りを存続させるために
豊後大野市三重町では数年前から「らいでん祭り」が開かれていたが、人手不足などを理由に2023年を最後に幕を閉じてしまった。
市ではこれを受け、祭りの主催者に対して「金銭面」や開催にあたっての不安が無いかアンケートを取るなどして祭りの存続に向けて取り組んでいるという。
「祭り」は地域の交流人口を増やすという役割や、経済的な効果ももたらすため、地域の存続にとっては非常に大きな存在である。
伝統的な祭りを絶やすことなく存続させるために手を取り合っていく必要がありそうだ。
(テレビ大分)
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