夏休みに入ってキャンプ場がにぎわう中、注意してもらいたいのがクマの被害だ。クマの目撃は全国で相次ぎ、宮城県内でもすでに400件以上と例年を上回るペースで目撃情報が寄せられている。安全で楽しいキャンプをするためにはどんな対策をすればいいのか、専門家に聞いた。
キャンプ場では“警戒”
仙台市の泉ケ岳にある市民キャンプ場。夏休みはたくさんの人でにぎわう。
取材した日も10組を超える家族連れが休日を楽しんでいた。クマ対策について聞いてみると、クマ撃退スプレーの購入を検討している人や、これから対策を考えたいと話す人もいて、対応には頭を悩ませているようだ。
キャンプ場内で定期的に開かれている自然体験教室でも、同じ山にクマがいることを子供たちに伝え、大きな影を見たら近づかないことを教えるという。教室の担当者はクマ撃退スプレーも準備して、万が一に備えていた。
グッズの売れ行き好調
夏のキャンプシーズンを迎え、仙台市内のアウトドアショップには熊鈴や撃退スプレーなどが並んでいるが、売り切れや残りわずかとなったグッズも目立つ。
去年多発したクマによる被害を受け、今年はさらに対策グッズの需要が高まっているといい、店の担当者も「週末を中心にかなり売れている」と話す。
熊鈴の“鳴子”や草刈りで対策
キャンプ場の運営側も神経をとがらせている。
市民キャンプ場のあるオーエンス泉岳自然ふれあい館では、周囲にロープを張って熊鈴をつけ、クマがロープに触れると鈴の音で気づくという仕掛けを作っていた。さらに下草を刈ってクマが身を隠すことができるやぶをなくし、キャンプ場と山林の間に緩衝地帯を作ったという。
専門家に聞くキャンプの注意点
野生鳥獣の調査や被害対策を行う合同会社「東北野生動物保護管理センター」の宇野壮春代表は、キャンプ場は山や川に面しているため普段の生活よりクマと遭遇する可能性が高いとした上で、夕方から朝にかけての時間帯は特に注意が必要だと話す。
宇野代表によれば、クマは本来、臆病な性格で人の気配がする場所は避けて行動する。一方で嗅覚が鋭く、人が寝静まった夕方から朝に、食べ物の匂いをたどってキャンプ場へやってくる可能性があるという。
そこで有効な対策となるのが、食べ物の適切な管理だ。生ごみは匂いが漏れないよう処理し、持ってきた食料はケースに入れ、匂いのついた食器や調理器具は放置しないなど、クマが近づいてくる目的を意識して対応することが大切だという。
取材した市民キャンプ場でも、ごみは利用者が持ち帰るか、有料のごみ袋を販売して引き取ることにして、生ごみをキャンプ場内に放置させないようにしている。引き取ったごみは鍵がかかる倉庫に保管する徹底ぶりだ。
クマと出合ってしまったら…
万が一、クマと出合ってしまったときはどうするべきか。宇野代表によると、クマに気づいたときの距離によって対応は分かれるという。
1、距離が遠い場合…自分の存在をクマに知らせてクマに逃げてもらう。
2、距離が近い場合…クマを興奮させないよう目をそらさずにゆっくりと後ずさりする。走ったり急な動きをしたりするとクマは興奮するので注意が必要だ。
それでも、クマが興奮状態だったときは襲い掛かってくることもある。
クマスプレーを持っていれば撃退することもできるが、スプレーの射程は3~5メートル。かなり至近距離でクマの目を狙わないといけない。
スプレーを持っていないときは地面にうずくまって首や頭を手で覆い、致命傷を負わないようにするしかないという。
まずは出合わないこと
クマと出合ってしまったら、できることはどんどん限られてしまう。一方で、熊鈴をつける、食べ物の匂いをさせないなど、クマを避ける対策はいたってシンプルだ。
キャンプを楽しく安全なものにするためには、まずクマと出合わない対策をしっかりと講じる必要がある。
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