暑い夏に食べたくなるスイカ。スーパーでは、ブロック状にカットされた皮なしのスイカの販売が増えている。
2022年までの10年間で倍増し、かつての「大玉」や「くし形」に代わって売り場の「主役」を張る店も少なくない。なぜなのか、そしておいしい「ブロックスイカ」の見分け方は--。
「即食」「生ごみなし」
一口サイズにカットされたブロックスイカのパックが、次々と買い物かごに吸い込まれていく。東武百貨店池袋本店(東京都豊島区)のテナントに入っている青果店「九州屋」の店頭では「ブロックがスイカ全体の売り上げの7~8割ほどを占め、メインになっている」(吉村直也店長)という。
なぜ売れているのか。週に1回ほどパック入りのブロックスイカを買うという板橋区の女性(73)は「子育てをしていた頃は大玉を買ったが、今は夫と2人暮らしで、そんなに多く食べられない。(ブロックなら)帰ってすぐ食べられるし、生ごみも出なくていい」。徒歩で買い物に来た豊島区の女性(85)も「他の買い物もするから、帰りに重くならない方がいい」と話した。
最も売れるカットフルーツに
そもそもスイカの収穫量は、作り手の高齢化や担い手不足を背景に減少傾向にある。農林水産省の統計によると、22年のスイカの収穫量は31万5900トンで、1973年の約3割にまで減っている。
そんな中で、ブロックスイカの販売が伸びている。民間調査会社インテージによると、全国のスーパーマーケットでのブロックスイカの販売額(22年)は推計275億5000万円。13年からの10年間で2・2倍に拡大した。カットフルーツ全体の約4割を占め、20年にはそれまで最も販売額が多かったカットパインに代わり、トップに躍り出た。
スーパー「イオン」を展開するイオンリテール(千葉市)によると、ブロックスイカの23年度の売上高は、13年度に比べて約3倍に拡大。一方、皮付きのくし切りや半分に切ったスイカは約1割減った。スイカ全体の売り上げは約2倍になっており、ブロックスイカが売り場を席巻している。
「核家族や1人暮らしが増える中、冷蔵庫に入り、食べきれるブロックが好まれるようになった」。全国の産地にスイカの種を販売する種苗会社「萩原農場」(奈良県田原本町)普及開発部の嶋田耕太さん(27)は、増加の原因をこう分析する。
ブロックに適した品種も登場している。同社は21年、果肉が硬めでカットしても汁が出にくい品種「ぷちっと」を販売。種が通常の大玉スイカの8分の1程度と小さく、そのまま食べられるのが特徴だ。品種名は種をかんだ時のぷちっとした食感から命名された。JAあいち経済連は昨年から「ぷちっと」の試験栽培に取り組んでいる。
「角・ドリップ・種の周り」に注目
おいしいブロックスイカの見分け方はあるのか。萩原農場の嶋田さんは見るべきポイントとして、
①角がシャープに立っている
②ドリップ(汁)がたまっていない
③種の周りに隙間(すきま)なくしっかり果肉が詰まっている
--の三つを挙げる。
これらを満たせば「新鮮で甘いスイカを選べる可能性が高まるでしょう」。角が丸まっていたり、容器の底に汁がたまっていたり、種の周りに果肉がなかったりする状態だと、切ってから時間がたっていたり、熟しすぎたりしている可能性があるという。
ただ、スイカは切ってから間もないほど鮮度が高い。嶋田さんは「便利さからブロックスイカのニーズは高いが、たまには大玉でも楽しんでもらえれば」と話した。【岡田英】
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