若者が気軽に相談できる場所が長崎市内のまちなかに誕生した。正しい性教育を広める活動をしている団体が月に1回開くカフェ。ふらっと立ち寄れる「まちの保健室」を目指している。その背景にあるのは、これまでの活動で実感した若者の「SNSでの性被害」の現状に対する危機感だ。

若者の「まちの保健室」

長崎市の中心部に誕生したのは「ユースカフェ」。7月から始まった、月に1回開かれる「まちの相談室」だ。中学生から20代の若者なら誰でも無料で利用できる。

月に1回開かれる「ユースカフェ」
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対応するのは看護師や不登校支援者、ソーシャルワーカーなどの「寄り添う専門家」だ。雑談もよし、相談もよし、1人で本を読むもよし。

ゆっくりくつろげるスペースも

ゆっくりくつろげるスペースもあるので、買い物がてら休憩で足を運ぶ、場所を変えて宿題をすませる。「くつろげる場所」がコンセプトだ。

「ささいな事」も「意外な出来事」

「ユースカフェ」を開いているのは、正しい性教育を広める活動をしている団体「長崎市性教育コミュニティ アスター」だ。

アスターはナプキンの配布や性教育を実施

アスターは2021年に発足し、生理の貧困対策のために学校や施設でナプキンを配布したり、ひとり親家庭支援、学校での性教育などを行っている。

「ユースカフェ」を提供する中山安彩美さんと小岱海さん

中山安彩美さんと小岱海さんの2人が共同代表を務める。

中山さんは看護師で、病院勤務の傍ら学校などで性教育を行っている。小岱さんは市内のお寺の僧侶で、不登校支援やデートDVの相談を受ける活動をしている。そんな2人が常々思っていたのは「性教育を正しく広めたい」ということだった。全国の性教育活動のコミュニティでたまたま知り合った2人が長崎で手を組んで団体を立ち上げ、念願だった「若者の相談場所」の提供にこぎつけた。

中山さんは「堅苦しく考えず、フラっときて、ちょっと気になる事とかを話す場になれば」と話す。例えば生理のこと、デート中にちょっと気になるパートナーの言動、友達の気になる行動、人間関係など親や学校では話せないことは意外と多い。本人にとっては「些細なこと」「当たり前なこと」も、人に話すと「意外な出来事」だと気付くこともある。

「まちの相談室」の必要性

アスターが活動を通して懸念を抱くのが「SNSでの若者の性被害」だ。SNSで性的な自画像を送るいわゆる「自撮り被害」など、若者の性被害は全国的に増えているが、中山さんと小岱さんは「長崎でも例外ではない」という。「自撮り被害などの性被害は若者の40人に1人が被害に遭っているというデータもある」と話す。クラスに1人は被害に遭っているという計算だ。都心部だけの問題ではないのは、日頃から相談を受ける2人の肌感覚で実感している。

性についての正しい知識があれば未然に防ぐことができる。そういう想いでアスターでは性教育や支援活動を続けている。被害に遭っている人や困っている人が相談できる場所がないことを実感し、ふらっと立ち寄れる場所を作ることは夢だったと話す。「ユースカフェ」はようやく実現した「まちの保健室」だ。

学校登校日にカフェを開く意味

月に1回午後に開く「ユースカフェ」。8月は9日で長崎県内の学校登校日。そして9月は2日で始業式。「学校に登校する日」に設定したのは理由がある。

共同代表の1人、中山さん

アスター共同代表 中山安彩美さん:
虐待を受けている子供は、学校がない日は家から出ることが難しい。あえて学校がある日の午後に設定し、学校帰りに立ち寄ってほしい。また夏休み明けの始業式は若者の自殺が最も多い日。頑張って学校に行けた人も行けなかった人も、ぜひ立ち寄って、今の想いを吐き出してほしい。

「言葉にすること」が問題に気づく一歩であり、解決の一歩でもある。「ぜひ寄り添ってくれる「専門家」を頼ってほしい」とアスターは話す。ユースカフェは若者に寄り添う「まちの保健室」だ。

浜の町保健室「ユースカフェ」
長崎市浜町8-15 1F FROM1(吉宗の通り)
時間 午後1時~午後7時
長崎性教育コミュニティ アスター Instagram(@aster_ngsk)

(テレビ長崎)

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