2024年も北海道は厳しい暑さに見舞われている。
沿岸の海水温も上昇しており、海産物に影響が出始めている。
異常高温が北海道の海産物に影響
北海道東部の釧路町昆布森で行われているサケの定置網漁では、脂がよくのった高級なサケ・トキシラズを求めておよそ10キロ先の漁場に到着した。
この記事の画像(6枚)しかし、事前に仕掛けていた網を船員が次々に引き上げると、ほとんどがブリだった。
例年であれば、ブリは秋に取れるが、2024年は7月から取れ始めたという。
別の場所で再び網を引き上げても、かかっているのはブリばかりで、トキシラズの姿は見当たらなかった。
「よくないな、今年もだめだな。トキシラズは取れない。年々、変わっている」(第七共進丸 船頭 川原田良己さん)。
さらに、暖かい海を好むマンボウが網に毎年かかるなど、冷たいはずの北の海で異変が見られた。
3時間の漁を終え、帰港したが、この日取れたのは、ブリがおよそ800キロ、マスが3匹、トキシラズはゼロだった。
「サケは少ない。例年より全然少ない。10分の1から5分の1っていうレベルくらいかな。ブリも100匹あるけど、今の時期のブリは冬と違って安いから、船の油代にもならない」(川原田良己さん)。
北海道各地で広がる異常事態
異変は他にも。
7月から北海道各地で本格化しているコンブ漁は生育が悪く、水揚げ量が減少している。
オホーツクの雄武漁協は漁を1日で中止するなど、今年の北海道のコンブ生産量は初めて1万トンを割り込む見通しだ。
こうした異変の原因の一つが、北海道付近の海面水温の上昇だ。
根室沖や北海道南部沖では海面水温が平年を6℃以上上回る「海洋熱波」と呼ばれる現象が発生している。
専門家によると、海洋熱波が9カ月も続いている地域もあり、コンブの生育や魚の回遊に影響が出ているという。
「まれな高水温が、まれに長期間続いている状態です」(水産研究・教育機構 水産資源研究所 黒田寛さん)。
高水温化の要因は、親潮と黒潮の動きにある。2024年は暖かい黒潮が北上している上に、冷たい親潮の勢力が弱く、水温が高めになっている。
さらに、黒潮から切り離された「暖水塊」と呼ばれる温度の高い渦が付近に停滞している。
「ダブルパンチ状態ですね。親潮が下りてこない、黒潮は北上する。1960年以降では初めて経験しているような状態です」(黒田寛さん)。
食卓への影響
この異常高温の影響は、食卓にも現れている。
釧路町のスーパーで捌かれていたのは、地元で取れたブリだった。
「ここまであふれるくらいブリが取れるのはここ数年、特に今年はすごいです」(スーパーヒロセ 睦店 関本義臣 鮮魚職長)。
もともとこの時期はサケやイカが主力だったが、水揚げ量が減少し、価格が倍以上になることもあるという。
「値段がどんどん上がっています」
「いままで手軽に食べられた魚が食べられなくなった」(いずれも買い物客)。
一方、暖かい海を好むマグロは地元のものが増えている。
「その時期の主力のもの、トキシラズやイカは年々、減ってきて取れなくなってきていますね。いま、とれてきている魚の美味しい食べ方を勉強して、お客さんに発信していけたらと思います」(従業員)。
今後も続くと予想される海の異常高温は、食卓に並ぶ魚にも大きな変化をもたらすかもしれない。
鄭重声明:本文の著作権は原作者に帰属します。記事の転載は情報の伝達のみを目的としており、投資の助言を構成するものではありません。もし侵害行為があれば、すぐにご連絡ください。修正または削除いたします。ありがとうございます。