「手話ダンス」が今、全国で広がりを見せている。曲の歌詞を手話で振り付けて踊るダンスだが、障がいのある人もない人も一緒に楽しめる。また、手話ダンスに関しては、障がいのある人だからこそできる仕事や役割があり、これまでとは違った働き方の可能性も秘めている。

障がいがある人も、ない人も一緒に楽しむ

「手話ダンス」は、曲の歌詞を手話で表現して、振り付けにして踊るダンス。

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相手の言葉を口の動きで読む聴覚障がい者らは、コロナ禍のマスク着用で、それができなくなってしまった。その事情を慮ったグループ、BTSが2021年の楽曲で「楽しい」「平和」などの言葉を国際手話で表現したことで、世界的に手話ダンスが認識されるようになった。

8月に「手話ダンス」の全国大会の西日本地区予選が岡山県で開催された。チームの構成は、障がいのある人だけ、ない人だけのチーム。あるいは、両者の混成のチームもある。

ダンサー:
表現力がとても高くて、そこにすごくぐっときた。他のダンサーにもたくさん見てもらいたいと思いました。

観客:
子供から大人まで、障がいのある人からない人まで様々な魅力があって、すごくよかったと思います。

ダンサーで審査員でもある菊田順一さんは、広島市内で障がいのある人たちが働くB型福祉事業所の代表も兼ねている。

菊田順一さん(右から二人目)

2023年の「手話ダンス甲子園」では、チーム「Sign(サイン)」の代表として、全国優勝を果たした。

手話の専門家が振り付けをチェック

手話ダンスには、手話の専門家の力が必要になる。菊田さんはこう解説する。

日本パラファンク協会・菊田順一副理事

日本パラファンク協会・菊田順一副理事:
ろう者の方や手話の得意な方の介入がないと、ダンサーだけだと手話がダンスになってしまう。手話はわずかな指の角度でも全く意味が異なるので、通訳の役割の人がキーパーソンとなる。

歌詞を手話に訳すのが「手話訳」の仕事だ。

手話ダンスチームSign・中村友映さん:
(手話)邪魔するな私が行くから。
(Q:手話としては伝わる?)
伝わると思います。人に向けて言えば伝わる。

歌詞と同じ言葉が、手話にはないことがあるので、曲のニュアンスを正確に伝える「手話訳」は専門性が高く、センスが必要だ。「手話訳」など手話ダンスには、障がい者の就業に結び付く仕事が多くある。

障がいがある人だからこそ、できる仕事

広島県に2023年は1つしかなかった「手話ダンスチーム」が、この1年間で4つに増えた。指導するのは、2023年に全国大会で優勝した「Sign」のメンバーだ。

「Sign」の代表でもある日本パラファンク協会の菊田順一副理事は、「今は障がいのある人でインストラクターや講師をしている人は少ないかもしれないが、障がい者ダンサーが増えてくると、仲間同士で情報を共有する『ピア』の観点から、障がい者が障がい者に教えることになるし、そうならなければならない」と指摘する。

障がい者が障がい者に教えることで、就業機会が増えることも期待される。手話ダンスは、障がいのある人たちにとって、今後、どのような進化を見せていくのだろうか?

日本パラファンク協会・菊田順一副理事:
障がいのある人だからこそ出せる雰囲気や動きがあると思う。障がいがあるからこそ伝えられる動きだったり、健常者では、まねができないところなので、障がい者の強みとして広まっていけばいいと思っています。

「手話ダンス甲子園」を主催する日本パラファンク協会の阿部裕彦理事は、手話ダンスをエンターテインメントにしていく必要性を強調したうえで「手話の持つ潜在的な魅力が芸術性に広がっていって、ダンスと融合して新しい文化になる」とその可能性を指摘する。

手話ダンスが、障がいがある人たちの“生きがい”に、そして新しい仕事に結び付くことが期待されている。

(テレビ新広島)

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