秋田の冬の味覚の代表格ともいえる「ハタハタ」。漁獲量が減少傾向にあり、秋田県内では今、“ハタハタ頼り”にならない漁業の形が求められている。
秋田県内の漁師にとって、ハタハタは大きな収入源となっている。2003年の県全体の漁業産出額は46億9100万円で、このうちハタハタは全魚種のトップの11億2600万円、全体の24%を占めた。
これが2022年には、県全体の漁業産出額が28億4900万円、ハタハタは全体の12%の3億4000万円と、約20年で3分の1以下にまで減少している。
さらに、2023年9月から2024年1月までの県全体のハタハタの漁獲量は109トンと、禁漁明けの1995年以降、最も少なくなった。今後、ハタハタが取れなくなることも想定する必要がある。
こうした中、男鹿市では、冬場の漁師たちの新しい収入源にしてもらおうと魚の養殖試験を進めていて、2024年度、初出荷を迎える。水深が深く、波が穏やかな漁港の特徴が生かされている。
4月17日、男鹿市の椿漁港に、多くの荷物を抱えた県水産振興センターの職員の姿があった。養殖している魚の最終チェックの日を迎えた。
椿漁港で育てられているのは「サーモン」。水揚げされたサーモンは、大きく立派に育っている様子だった。
秋田県は、県漁業協同組合などと連携して、漁師の冬場の収入源を新たにつくろうと、2020年から地元の漁師とともに実証試験を始めた。
試験は100匹ほどの養殖からスタート。秋田の海に合った稚魚の品種や餌の量など手探りで進められ、開始当初の生存率は約3割にとどまるなど、苦労が絶えなかった。
秋田県水産振興センター・寺田幹主任:
「漁師さんも魚を取るのはプロだが、育てるのは全くこれまで知識がなかった。最初は慣れないことに大変な思いをしていたが、育ててみて、それを自分で食べてみて『やっぱりおいしいな』とか『かわいく見えてきた』という話を聞いて、楽しそうに見えた」
3年間の研究で生育技術が上がり、稚魚の生存率が8割を超えたため、事業化への道筋がついた。2023年12月には最終チェックとして250匹の稚魚を放ち、約4カ月半、生育を見守ってきた。
4月17日は15匹のサーモンを水揚げしたが、生育は順調のようだった。
近くにある県水産振興センターで身の質や重さを確認すると、この日取れたサーモンは平均2.8キロと、十分市場に出せる大きさだった。
秋田県水産振興センター・寺田幹主任:
「魚の成長もよく、身の色も試験当初よりも良い色になってきたのは魚を開いてみて実感できた。一つ男鹿に人を呼び込むためのツールになればいい」
このほかのサーモンは、4月26日と5月2日の2回に分けて水揚げする予定で、一部を競りにかけるほか、男鹿市内の道の駅おが「オガーレ」でも販売される。
椿漁港では、この冬から本格的に養殖事業に取り組む予定で、男鹿のサーモンが新たな秋田の名物となるか注目だ。
秋田県は、養殖のノウハウなどを積極的に漁業者に伝えていくことにしている。
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