来年4月、大崎市に全国で2例目となる公設公営の日本語学校が開校します。背景にあるのは、人口減少に対する地方の危機感です。外国人の受け入れは新たな活力となるのか、宮城の未来が問われています。

のどかな田園風景が広がる大崎市古川保柳地区。去年閉校した西古川小学校の校舎を活用し「おおさき日本語学校」が開校します。全国では2例目の公設公営の日本語学校で、インドネシアや台湾、ベトナムからの留学生を受け入れます。

おおさき日本語学校 鈴木俊光校長
「一番本校の特徴的な部屋を紹介します。こちら礼拝室になります。礼拝をする前に、お清めをするそうです。それでこういうような設備も備え付けてあります。手足とかを清めるように」

開校前から模擬授業を行い質の高い教育を目指すほか、地域交流を活発に行う学校作りが進められています。

おおさき日本語学校 鈴木健司教員(都内から移住)
「気が引き締まる思い。開校するからには地域の人たちと連携して地域とともに成長していく学校を心がけたい」

そもそも、なぜ大崎市に公立の日本語学校が設立されるのでしょうか。発端は、地方の人口減少に強い危機感を抱く村井知事が打ち出した構想です。

宮城県 村井嘉浩知事
「県内の人口減少が本格化していく中で、外国人の受け入れを促進し地域活力の維持や活性化につなげていくことは今後ますます重要になる。県内の日本語学校が全て仙台市内にある現状を踏まえ、仙台市以外への設置を念頭に意欲のある市町村と意見交換したい」

出生率の大幅な上昇が見込めない中、海外からも人を呼び込み、定住人口や交流人口の拡大につなげようという発想。こうした県の考えに呼応し、日本語学校の設立に名乗りを挙げたのが大崎市でした。

大崎市 伊藤康志市長
「大崎には世界農業遺産やラムサール条約温泉やスキー場をはじめ、素晴らしい農村景観、日本を代表する文化や生活が凝縮されている。日本の良さを知っていただく」

大崎市の人口の年齢構成を1980年と比べると、来年、65歳以上の割合は31.7%と約3倍に増え、14歳以下の割合は11.8%と約半分になると推計されています。

一方、大崎市は県内で仙台市、石巻市に次いで3番目に在留外国人が多い地域でもあります。大崎市内には製造業の拠点となる工場が多いことなどが要因に挙げられています。

大崎市古川の住民17人が受講していたのは、外国人留学生と話すための「やさしい」日本語講座です。

講座の様子
「『やさしい』という平仮名表記は2つの意味を合わせ持っていて、簡単であるという意味の『易しい』と親切であるとか愛あふれるといった意味での『優しい』のダブルミーニング2つの意味を持っている言葉です」

この地域では現在、日本語学校の学生寮の建設が進められていて、講座は留学生を受け入れる住民向けに開かれました。とはいえ、歓迎する住民だけではないのも事実です。

講座に参加した住民
「外国人ということで治安という面で不安なところが地区にはあった」

住民が抱くさまざまな不安を解消するためにも、大崎市は、公設公営の日本語学校をすでに運営している北海道東川町を住民の代表と視察。課題とともに地域がどう変わるのかイメージを固めました。

視察に参加した住民
「訪問したとき留学生何人かすれ違ったのですが、同じ空間に溶け込んでいる感じで、これが国際化なのかなと感じた。私たち高齢者からみれば不安なんですけど、若い人たち、例えば小学生とか中学生にとっては新しい国際感覚を養えればと思っています」
「特に地区の人たちは人が減っていますし、高齢化しているので外国の留学生に来てもらって日本文化に少しでも触ってもらえると」

地域の活力を維持し、世界で活躍する人材を育てていくために。視察に参加した住民は大崎市の未来のために必要な選択だと感じたといいます。

おおさき日本語学校 鈴木俊光校長
「地域の理解と協力がないと成り立たないし、いい学校にはならない。活性化のための学校でもあるが、学校自体が良くなるために地域と協力することが大事」

「おおさき日本語学校」は来年4月に開校する予定です。

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