秋田県八峰町に生薬やナシ作りに取り組む農業トリオがいる。町の若い農家のロールモデル(模範)となって地域を盛り上げたいという3人の思いを紹介する。

優しい香りの「カモミールティー」に、みずみずしい秋の味覚「ナシ」。この2つを生産しているのが、八峰町の地域おこし協力隊で結成した若手農業トリオ「やっほ~farm」だ。

底抜けの明るさでみんなを引っ張る代表の越前谷淳さんは、神奈川県出身。果樹を担当する山田勝さん、山田さんの妻で広報担当の山田菜々子さんは、秋田県能代市出身。同じ時期に地域おこし協力隊になった3人が、「田舎暮らしと農業の楽しさを発信したい」という思いで意気投合し、2022年から活動を始めた。

やっほ~farmの越前谷淳さんは「例えば、東京の首都圏の人々に向けて『八峰町に移住するならこういう暮らしがある』と発信するために3人で畑を始めた。ただ野菜を作るよりは、せっかくなら八峰町らしいことをしようということでカモミールティーの販売や栽培を始めた」と話す。

公私ともに仲が良い3人。畑では山田夫妻が協力隊の仕事として携わっている生薬「カモミール」の栽培に取り組み、ハーブティーに加工するなどPRにも力を入れてきた。

さらに2023年からは、地域のナシ農家を引き継ぐ準備に取り組んでいる。130年以上の歴史を持つ「笠原果樹園」は、生産者が高齢などを理由に引退することを決めた。2025年1月から3人が事業を引き継ぐ予定だ。

越前谷さんは「町自体が第三者に事業承継するのが初めて。地域の農家も『頑張れよ』と言ってくれたり、『うちの畑もやってくれ』という人もいたりするので、期待に応えられるように取り組んでいる」と思いを語った。

ナシの栽培は、山田勝さんが中心となって学んでいる。山田さんは現在の生産者について「130年以上受け継いできたナシの栽培方法を教えてくれるが、『若いから君たちのやり方で成功させればいいよ』と言ってくれる。すごく親切にいろんなことを教えてくれる」と話す。

いま収穫のピークを迎えているナシは「あきづき」や「かほり」など。果樹園ではさまざまな品種を育てていて、収穫期も8月から10月までと長く、気が抜けない。

山田さんは「去年の剪定(せんてい)から関わっているが、自分が育ててきたものがちゃんと成果になって実になったので、すごく感動した」と喜びを語った。

3人に果樹園を託す笠原果樹園の笠原吉範さんは「彼らがやってくれるのであれば、定住にもつながると思う。後継者がいなくて困っている人がたくさんいると思うが、八峰町のそういった人々のこれからの動きにつながればいいと思う」と期待を寄せる。

若い力が町を元気にする。「やっほ~farm」が目指す今後の姿について、代表の越前谷さんは「町の若い農家のロールモデルになって、僕らと同じように八峰町でハーブをやりたい、ナシをやりたいという人々が現れてくれればいいなと思う。新しい歴史と伝統的な歴史を守っていけたらいいなと思う」と語った。

「やっほ~farm」は、これからも八峰町から農業の楽しさを発信していく。

やっほ~farmでは、10月5日は鹿角市のクラウンマルシェ、6日は能代市ののしろ産業フェアでナシやカモミールティーを販売する予定で、今後は通販サイトの開設も予定している。

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