10月10日は「目の愛護デー」です。そこで今回の「健康のタネ」のコーナーは目に関する話題です。上下のまぶたの裏側には、20~30個ずつ管になって並んでいる「マイボーム腺」という器官があり、この機能が低下する病気を「マイボーム腺機能不全」といいます。
実は近年の研究で、日本人の3人に1人がこの病気を患っていることが分かってきました。症状や予防法を専門医に聞きました。
話を聞いたのは、福井市にある島本眼科の広瀬真希医師です。広瀬医師はマイボーム腺機能不全について「上下のまぶたにあるマイボーム腺の機能が低下して目の不快感が現れるというもので、ここ近年で行われた日本での疫学調査では、日本人の33%にこの病気があるということがわかってきた。まだ、あまり知られていないと思う」と話します。
日本人の3人にひとりが患っているにもかかわらず、あまり知られてないという「マイボーム腺機能不全」。そもそもマイボーム腺とは「脂を出すための分泌腺。涙の蒸発を防いだり涙を安定させたり、瞬きの摩擦を減らす働きがある」(広瀬医師)といいます。
しかし、加齢や細菌感染などでマイボーム腺の管が詰まると、脂の質が低下したり分泌される量が減ったりして、目の不快感を引き起こします。これが「マイボーム腺機能不全」です。
広瀬医師は「ドライアイの症状や目がゴロゴロしたり重くなったり涙目になったり疲れたり…生活の質が落ちるといわれている」と警告します。
マイボーム腺の出口に脂がつまっている状態を「タピオカサイン」といい、タピオカのようにプツプツと丸いふくらみが出てきます。
「脂の質が低下してくると黄色くドロッとした脂が出たり固まったりして、慢性的に詰まってくると最終的には分泌されなくなってくる。古い脂を放置すると、そこに細菌やダニが繁殖して炎症を起こし、まつ毛が抜けやすくなったり『ものもらい』になりやすくなる」と広瀬医師は話します。
さらに「近年の研究ではドライアイの原因の8割以上がマイボーム腺機能不全による脂不足であるということがわかってきた」といいます。
マイボーム腺機能不全は、高齢者や肥満、更年期以降の女性などに多いとされていますが、若者も例外ではありません。
広瀬医師は「アイメイクをする人とコンタクトレンズを装用する人、スマホやパソコンを長時間使用する人はリスク因子となるといわれている」とします。
その原因は▼まつ毛の内側にアイラインを塗ることで、マイボーム腺の出口をふさいでしまう▼スマホなどの画面を集中して見続けて瞬きが浅くなることで脂の分泌が減少すること。これらが原因となり、マイボーム腺機能不全を引き起こす可能性もあるため注意が必要です。
予防法として有効なのが「まぶたをあたためる」こと。市販のホットマスクや電子レンジで温めたタオルをまぶたの上にのせて温めることで脂を溶かして血流を改善します。脂を溶かす最適な温度は40度、1日2回5分ずつが目安です。
予防のポイントは以下の通りです。
▼まぶたを温める
ポイントはまぶたを濡らさないこと。蒸しタオルの場合はビニール袋に入れる。渇くときの気化熱で瞼の温度がさらに下がってしまうのでせっかく溶けかけた脂が固まってしまう。
▼アイラインはまつ毛の内側には塗らない。
▼パソコン業務などはこまめに休憩をとり意識的にしっかり瞬きし、回数を増やす。
▼アイメイクをする人はメイクを落とすための洗顔でまぶた周辺を清潔にしていることも多いがアイメイクをしない人もしっかり汚れを落とすよう心がける。
このほか、目元専用のシャンプーなどでまつ毛の根元を優しく洗うことも、細菌を減らしたり古い脂を取り除くのに効果的です。
治療薬は主に抗生物質やステロイドの点眼です。気になる症状がある方は眼科を受診してみましょう。
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