静岡県焼津市出身の男性が東南アジアのタイで障がいを持つ子供たちの支援に取り組んでいる。「子供たちの将来の選択肢を広げたい」と異国の地で活動を続ける男性の思いに迫った。
聴覚障がいの子供たちの交流支援
この記事の画像(11枚)タイ東部・リゾート地パタヤで知られるチョンブリ県。
会場に響く笑い声。イベントに参加していたのは聴覚に障がいのある子供たちだ。
この日は日本から聴覚障がい者のサッカーチームの子供たちが招待され、タイの子供たちとスポーツを通した交流が行われた。
イベントを企画したひとり、静岡県焼津市出身の大畑尚則さん(49)。
タイで企業を経営するかたわら、耳が不自由な子供たちの支援を行っている。
大畑尚則 さん:
この子たちは特に人の視線と目とか表情と手の動きをしっかり見ているので、手話はタイ語と日本語で全く違うんですけど、自分たちで考えながら頭の中で変換して「こういうこと言っているんだろうな」と会話をしている
日本とタイの懸け橋に
25歳の時、青年海外協力隊としてタイに派遣され、孤児院で2年間働いていた大畑さん。
近くにあったろう学校では子供たちにサッカーを教えていた。
大学時代から起業を志していたという大畑さんは、この赴任をきっかけにその後タイでユニフォーム、ビブスの製造会社を起業。
32人のタイ人従業員の中には協力隊時代に活動していた孤児院出身者もいるそうだ。
そして10年前からは年に1回、サッカーや観光などを通して子供たちが親睦を深める国際交流イベントを開いている。
大畑さんは「日本にも還元したい。タイにも還元したい。自分はタイ語と日本語の両方の文化を知っているのでその架け橋になれれば」と思いを語った。
イベントに参加したタイ人のオートくんは「日本とタイの子供たちが一緒にいて一体感があった。サッカーで一緒に遊べてとてもよかった」と手話で感想を教えてくれた。
障がい者の雇用に向け職業体験を
大畑さんが長年活動を続けているのには理由がある。
交流イベントに先立ち、子供たちが訪れていたのは宅配大手・ヤマト運輸のタイ法人だ。
スタッフが手話で「皆さんがお店で買う商品がお店に並ぶ前の作業について説明します」と始めた。
ここで行われたのは職業体験。子供たちにとっては初めての経験だ。スタッフの指導を受けながらお客さんに配送する商品を段ボールに詰めテープでとめていく。
大畑さんは「障がい者雇用というかたちで子供たちが将来企業に就職していく。その一環として各企業にお願いして職業体験をやらせてもらっている」と狙いを教えてくれた。
タイの企業は健常者100人につき1人、障がい者を雇用しなければならない。
しかし、障がい者基金に寄付をすれば免除されるため、雇用が進んでいないのが実態だ。
大畑さん自身はろう学校出身の女性を中心に雇用して日本のお菓子を作るメーカーを立ち上げようとしたが、コロナ禍もあり断念したそうだ。
職業体験の合間に時間ができると子供たちは互いの国の手話を教え合うなど積極的に交流していた。大畑さんは見守るだけ。子供たちの自立のため手助けはあえてしない。
参加した日本人の中山翔くんは「段ボールにテープを貼るのがとても大変だった。(でも)楽しかった」と手話した。
子供たちの未来の扉を少しでも大きく
大畑さんはこうした体験を通して仕事への興味、そして将来への希望を持って欲しいと話す。
大畑 尚則さん:
子供たちの未来の扉を少しでも大きくしてあげる、別の扉を用意してあげる、そういったことをしてあげるのが大人の義務かなと思っていて。今後もずっと続けていきたいし、いろんな企業が携わってくれればうれしい
障がいに関係なく挑戦できる世の中にしたい。
子供たちの未来に寄り添う大畑さんの活動は続く。
(テレビ静岡)
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