日本人の死因で、がんに次いで多いのが「心臓病」だ。発症から治療までの時間が命を左右する急性心筋梗塞。少しでも多くの命を救おうと、宮崎市の救急医療現場では、患者を搬送する段階で心電図を医師と共有できる新たなシステムが導入されている。
突然死の原因として最多「急性心筋梗塞」
厚生労働省の人口動態統計によると2023年、宮崎県内では心臓病で2615人が亡くなっている。
この記事の画像(14枚)中でも、血管が詰まることで心臓の筋肉に血液が届かなくなる急性心筋梗塞は、突然死の原因として最も多い病気と言われている。
宮崎市郡医師会病院 柴田剛徳副院長:
血管が詰まって筋肉が壊死(えし)していくと、突然死の原因になったり、心臓が破れたりする。2~3時間で再灌流(かんりゅう)してあげれば筋肉がかなり助かるので、とにかく早く診断することがとても大事。
急性心筋梗塞の患者受け入れ数で国内トップ10に入る宮崎市郡医師会病院の心臓病センターでは、専門医約30人、看護師などのメディカルスタッフ約150人が在籍し、24時間365日体制で救急患者を受け入れている。
救急車両から心電図をドクターへ
2021年に、この病院に導入されたのが「12誘導心電図伝送システム」だ。
119番通報を受けた救急隊員が、救急車両の中でとった患者の心電図を、離れた場所にいる専門の医師に共有できるシステムだ。
高松誠医師:
どの端末にもこのシステムが入っていますので、それを使って診る。モバイル端末の中にもシステムが入っているので、モバイルでも診ることができる。
これまでも同様の心電図伝送システムがあったものの、以前のシステムは「心電図の画質が悪い」「伝送時間がかかる」などの課題があり、救急隊員が患者の症状などを電話で伝えて、受け入れ先の病院を探すのが一般的だった。
カテーテル治療は23分短縮
新しいシステムを使うことで、症状の判断が難しい場合でも、早い段階で専門医が心電図を確認できるため、患者が病院に到着する前に必要なスタッフを集め、治療態勢を整えることができるようになった。
宮崎市郡医師会病院 柴田剛徳副院長:
患者が来られることがわかれば、夜間でもドクターを4~5名呼び出すことが可能。患者さんが到着する前に、血管造影室の準備も整っているので、すべてが非常に早く病院の中で対応できる。1分でも2分でも早く治療が完結できるということになれば、これを継続することで、救命率もより上がっていくと考えている。
このシステムを使って、2023年3月から2024年2月までに宮崎市郡医師会病院に心電図が伝送された件数は65件で、前の年の1.7倍に。患者が病院に搬送されてからカテーテル治療が終わるまでの時間は、システム導入時に比べ23分短縮された。
宮崎大学医学部でもシステム導入
宮崎大学医学部附属病院も、心電図伝送システムを導入した医療機関の一つだ。海北幸一教授は、大学で急患の患者を増やすために目をつけたのが、SCUNAという心電図伝送システムだったと話す。
2024年3月に宮崎大学で開かれたセミナーでは、システムの開発に携わった自治医科大学附属さいたま医療センターの藤田英雄教授が講演。先行導入した他県の実例を紹介、心電図の情報共有を通して、救急隊と医療機関の連携強化につながっていることなどを説明した。
自治医科大学附属さいたま医療センター 藤田英雄教授:
我々は患者さんが来られてからのDoor to Balloon Time(病院到着から治療までの時間)を縮めることも重要なのですが、病院の中で完結する医療と、病院の前、消防隊や救急救命士はプレホスピタル(病院に搬送前)のチーム医療の一員であると今後考えていかなければならない。
最先端医療で救命率向上を目指す
宮崎市郡医師会病院の柴田副院長は、こうした最新技術を導入するとともに、救急医療に携わる関係機関と連携を密にしながら、患者の救命率向上を目指したいと話す。
宮崎市郡医師会病院 柴田剛徳副院長:
東京では救えるけれども宮崎では救えない。こういった地域差のないように、最先端の医療を取り入れて宮崎で完結できる医療を目指したい。
医療現場では、こうした新しいシステムを用いて早く治療し、命を救う態勢づくりを進めているが、心筋梗塞の患者のうち約35%は、病院に到着する前に亡くなっているという統計がある。
柴田副院長は、以下の症状がある場合は心筋梗塞を疑い、最寄りの医療機関を受診してほしいと話している。
●胸が締め付けられる痛みが続く
●階段や坂道を上り下りする時に腕や下あごが痛くなる
●冷や汗がひどく、意識を失うことがある
●発作が数十分続く
私たち自身や周囲の人が、初期症状に「気づく」ことも大切だ。
(テレビ宮崎)
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