特集は信州で育てる沖縄の名物です。2024年5月、長野県内では珍しい海ぶどうの養殖が始まりました。場所は、日本で海から最も遠い地点がある佐久市。養殖を始めた男性を取材し、お薦めの食べ方も紹介してもらいました。
■”海から最も遠い地点”で海ぶどう
緑色の丸い粒が鈴なりに。まさにブドウのようです。
温暖な海で育つ海藻の一種・海ぶどう。プチプチとした食感から「グリーンキャビア」とも呼ばれています。
沖縄の名物として知られていますが、こちらは佐久穂町にある道の駅の店頭です。
購入した客:
「小さい方、一つ買っていきます。沖縄とか宮古で食べるものとうイメージがあるので、びっくりした。こんなところにあるのが」
「沖縄でしか見たことなかったので、まさか佐久にあるとはびっくり」
道の駅 八千穂高原・林真季亜 駅長:
「『え、海ぶどう?』とびっくりされて足を止める方もいらっしゃる。(売れ行きは)上々、ありがたい限り」
実は、こちらの海ぶどう、沖縄産ではなく佐久市で養殖されたものです。養殖を始めた人を訪ねてみました。
高原グリーンキャビア・横山健二さん
「ここが僕が海ぶどうを育てているところ」
水槽の中で育つ海ぶどう。養殖を始めたのは地元出身の横山健二さん(36)です。
横山さんは埼玉県の病院で臨床工学技士として働いていましたが、Uターン。酒蔵で10年ほど働いた後、若いうちに経営にチャレンジしたいと自分で事業を始めることにしました。
目を付けたのは佐久市にある「日本で海岸線から一番遠い地点」。
高原グリーンキャビア・横山健二さん:
「地元に日本一、海から遠い地点というのがありまして、前々から日本一なのに何も生かせていないので一個、インパクトのあることをやりたいと。海ぶどう作ったら面白いんじゃないかと、海なし県なんて言わせないよ、なんて」
■海ぶどう どう育てる
海ぶどうの養殖を思いつくと早速、鹿児島県指宿市へ。養殖業者から技術を教えてもらい、2024年5月、佐久で養殖を始めました。
横山健二さん:
「180リットル入っていて、水じゃなくて海水になっている」
パウダーの「海水の素」を使って水槽を人口海水で満たし、三重の業者から仕入れて増やした海ぶどうを植えます。
植え方は企業秘密。
そのあとは毎日、水質検査や「液肥」による栄養補給が必要となります。始めてみると、以前、仕事にしていた酒造りに通じるところがあったと言います。
横山健二さん:
「毎日の水質管理はお酒の毎日のタンクの様子を見るのにも通じるかな。目に見えづらい生き物、お酒も菌なので、生き物なので」
光を当てて光合成を促進。水温を一定に保つため室内はエアコンで26℃から27℃に保ちます。そうして1カ月ほど、育てると、収穫の頃合いに。
横山健二さん:
「宝石のようなツヤツヤ感」
こちらの水槽一つで15キロほど収獲できるそうです。
海ぶどうの味はー
(記者リポート)
「いただきます。プチプチとした食感が楽しいです。南国を思い出すような味です」
■お薦めの食べ方は
お薦めの食べ方も紹介してもらいました。
牛肉で巻いた「海ぶどうの肉巻き」。
横山健二さん:
「おいしいです。(肉の)油っぽさを(海ぶどうの)ぬめりが洗い流してくれるので、とってもよく合う」
海ぶどうのしゃぶしゃぶもおすすめ。食感が失われないようさっとだしにくぐらせます。
ぽん酢につけて。
(記者リポート)
「あ、きれいな緑色に」
海ぶどうの色がより鮮やかに。
ポン酢につけて。
(記者リポート)
「鮮やかな色になった海ぶどうとお肉がマッチしてとてもおいしいです」
「冷ややっこ」にのせても美味!
■家族は園芸農家 その環境も影響
横山さんの実家は園芸農家。実は兄・準さんも「プチプチ」としたものを栽培しています。
兄・準さん:
「森のキャビアと呼ばれるような植物」
こちらはフィンガーライム。オーストラリア原産のかんきつ類で中身が粒状になっています。県内での栽培はまだ珍しいということです。
兄・準さん:
「果肉がつぶれると中から酸味が口いっぱいに広がる。うちはもとはシクラメンをやっていたんですけど、でも施設はビニールハウスも暖房設備もあるということで、寒い信州でも暖房設備ないとできない植物をやってみたいと」
横山さんの養殖は家族が園芸農家という環境も影響して始まったようです。
■山国・信州で広めたい
県内の海ぶどうの生産者は横山さんだけ。6月から地元の道の駅やスーパーなど4カ所に出荷しています。
コストはかかりますが、知ってもらえれば十分、需要はあると見ていて、海から遠い佐久の地で育てる海ぶどうを山国・信州で広めたいと意気込んでいます。
高原グリーンキャビア・横山健二さん:
「(海ぶどうは)低温過ぎても、高温過ぎてもダメなので、沖縄の食べたいからと真夏に輸送してもつぶれちゃうし、真冬だと寒くてつぶれてしまうが、地元で作って地元で配送できれば温度の影響なく新鮮な海ぶどうが食べられる。どんどん量を増やして長野県に広めていけたら」
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