中部大学の平田豊教授と山中都史美大学院生は、ヒトの目が心拍による頭のわずかな揺れを補正して視界のブレを防いでいることを発見した。目が頭の揺れと逆方向に動いてブレを打ち消すが、眠気が近くなると正常に打ち消せなくなる。運転手の目の動きから眠気の予兆を捉える技術に活用できるとみて実用化を目指す。
ヒトは耳の内部の「前庭系」という部分を使って頭の揺れを検出する。この部分に障害のある人は本をうまく読めないが、頭を固定すると読めるようになるとの報告がある。頭の揺れによって視界がブレて文字を追いづらくなるとみられる。研究チームは、人体には検出した頭の揺れをもとに視界のブレを防ぐ仕組みがあるとみて研究を進めた。
目と頭の動きを検出するゴーグル型の装置を使って調べると、頭は心拍1回につき数回、1度未満の角度でわずかに揺れていた。このとき目は反射運動を起こして逆方向にほぼ同じ程度動き、視界のブレを打ち消していた。眠気を感じる少し前から反射運動の精度が下がることも分かった。
研究チームは心臓から頭部に血液が届くと、血管内の血圧が変わったりするために頭部が揺れるとみている。頭部の血管の分布が均一でないことも一因とみられる。
これまで目の反射運動は、乗っている車が揺れるなど体が外から揺らされた時に起きると分かっていた。今回の研究はヒトの体が揺れない状況でも反射運動が起きると明らかにした。
居眠り運転による事故を防ぐため、運転手の眠気を検知する技術の開発が求められている。目の反射運動の変化から眠気を判別する技術も注目されるが、これまでは車が走って体が揺れている時しか使えないとみられていた。今回の成果で車の停止中にも使えると分かった。
平田教授は「今回調べた目の反射運動は本人が眠いと感じる前に鈍ってくる。眠気の予兆の段階で警告するシステムの実現に役立つ」と期待する。研究成果は国際科学誌サイエンティフィック・リポーツに掲載された。
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