理化学研究所と香川大学は1日、新しい仕組みの新型コロナウイルスワクチンの安全性や効果を確かめる医師主導の臨床試験(治験)を11月にも始めると発表した。従来のワクチンでは十分な効果が出ない血液がん患者向けに、ウイルスのたんぱく質を持ったヒトの細胞を投与する。感染時に重症化しやすい人を守る技術として実用化を目指す。

治験について説明する理化学研究所の藤井眞一郎チームリーダー(右)ら(1日、東京都千代田区)

新型コロナワクチンでは、たんぱく質の設計図にあたる物質「メッセンジャーRNA(mRNA)」を投与するmRNAワクチンなどが実用化されている。mRNAワクチンは投与するとmRNAをもとにしてウイルスのたんぱく質が作られ、免疫細胞が働いて感染を予防する抗体ができる。

ただ免疫細胞などががん化する血液がん患者では抗体が十分できないことが多く、感染すると重症化しやすい。効果の高い予防法が求められている。

研究チームは免疫の司令塔となる「樹状細胞」に着目し、この細胞を強く働かせるワクチンを考案した。ヒトの細胞に新型コロナウイルスのたんぱく質などを入れて投与する。細胞表面の分子で特定の免疫細胞を呼び寄せ、この細胞が樹状細胞の働きを強める仕組みだ。

新型コロナウイルスのオミクロン型の電子顕微鏡写真=国立感染症研究所提供

マウスを使った実験では予防効果に関わる免疫細胞をmRNAワクチンよりも多く誘導できた。細胞は投与前に分裂能力を失わせ、短い期間で体内からなくなるようにして安全性を確保する。

血液がんの一種である成熟B細胞腫瘍になり、その後、治療でがんがなくなり経過観察している患者10人を対象に治験を実施する。接種の安全性を確認し、予防効果に関わる免疫細胞の量の変化などから効果も検証する。

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