「MBTI(エムビーティーアイ)」という言葉を聞いたことがあるだろうか。精神分析・心理学者のユングの「心理学的類型論」という理論を基にした性格検査の一つで、「Myers-Briggs Type Indicator」を略した言葉だ。日本でこの検査を手掛ける一般社団法人日本MBTI協会の園田由紀代表理事(ユング派の臨床心理士)にその活用法や注意点を聞いた。

MBTIは自己分析の手法でもある。発祥の地、米国では例えば、スポーツや医療などの現場でも研修に使われている。園田さんが日本版を開発し、2000年から普及を始めた。

「MBTIは自己分析の手法として知られており、米国では長い間、様々な場面で幅広く活用されてきた。例えば、スポーツでのチームビルディングのほか、ミスコミュニケーションが致命的になる医療の現場でも研修に使われている。いまでは51カ国以上で利用されている」

「心にも『利き手』があるという考え方で、人のものの見方や判断の仕方、興味関心の方向など二律背反となっている4つの指標に基づき、利き手を組み合わせて16の認知パターンに分類する。『人それぞれ異なる認知スタイルがある』という視点で人の性格を理解するものだ。自分にとっては『心の利き手でない』認知スタイルの心も意識的に開発することで、視野が広がり、自らの心の成長を促す羅針盤にもなる」

「米国に住んでいた1980年ごろにMBTIに出合った。米国には多様な民族や宗教の人がいるのが当たり前だが、日本ではそうした多様性を実感しづらい。MBTIによって認知スタイルの違いを知ると、同じ日本人同士でも多様性を実感できると考えた」

「帰国して驚いたのは日本で自己肯定感の低い人が多かったことだ。MBTIで自己理解が深まれば、他者と比べない自分を知り、自己肯定感を高めるきっかけになると思った。そして10年かけて日本人に合うように質問項目の開発や信頼性と妥当性の検証を進め、日本版を開発した。MBTI有資格者を訓練するためのコンテンツも開発し、2000年から普及活動を始めた」

日本ではMBTIを研修に取り入れている職場が100社以上あるという。他者だけでなく自分自身を知る機会になっている。

「MBTIを研修に取り入れている企業は、健全な人間関係を構築させたり、最近では1on1(ワンオンワン=1対1での対話)を向上させたりするなど、様々な目的をもっている。MBTIを研修に導入することで、意外に自分のことも相手のこともわかっていないことに驚きをもって気づく機会になっている」

「また認知スタイルが異なると、話す『言語』が異なるということにも気づかされる。私が実際に行っている研修では、自分の心の利き手ではない言語を読んでもらう演習がある。受講生は皆、非常に驚いている」

MBTIはタイプで人を決めつけるものではない。検査結果が出てからも重要なプロセスがある。

「MBTIと似た16のタイプ分けがされる性格診断のようなものがウェブで無料公開され、誰でも回答できるようになっている。これはMBTIではない。MBTIは人をカテゴライズすることを目的としていない。むしろ、タイプで人を決めつけてはいけないと明記した倫理規定がある」

「MBTIは性格診断テストではなく、検査の結果が出てからも重要なプロセスを踏んでいく。出てきた結果と自分の実際を照らし合わせながら、国際規格の訓練を受けて合格した『MBTI認定ユーザー』の支援のもとで、自分自身をじっくりと分析する。そうしたセッションを最低4時間かけて行うことを奨励している」

「かつて日本では、血液型で人の性格を定義する風潮があった。勝手に性格を決めつけられ傷ついた人も多いと聞く。人間は誰しも深淵であり、自己を知るというには非常な労力を要する。しかし、それだけの価値があるということを、この機会にぜひ知ってほしい」

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