横浜市内で無料で潮干狩りが楽しめる「海の公園」(金沢区)で近年、マテ貝取りが人気を博している。天然のアサリの不作が続いているためだ。なじみがない貝のため、この道71年で自称「潮干狩り超人」の原田知篤さん(74)=横浜市港北区=に教わりながら収穫を体験した。
快晴になった4月下旬。平日にもかかわらず、浜辺には黙々と砂浜とにらめっこをする大勢の人の姿があった。
浜辺は千葉県から砂を持ち込んで造った人工浜だが、天然のアサリが取れる。しかし、潮干狩りに関する著作もある原田さんによると、肉食のツメタガイやアカニシの食害などにより、2020年ごろからアサリは激減したという。
代わりに注目されるようになったのがマテ貝だ。全国各地に生息しており、江戸時代にも潮干狩りを楽しむ俳句が残っている。
使う道具は、食塩と片手で持てるじょれん。原田さんは「塩は粒が細かい安いもので大丈夫。じょれんも園芸用の移植ゴテで代用できる」と教えてくれた。どちらもホームセンターや100円ショップで簡単に手に入るという。
半ズボンに着替えて、裸足で海に入った。少し冷やっとするが、前を歩く原田さんは海の中にできた干潟に向かってずんずんとまっすぐに進んでいく。
「ここでやってみましょうか」。振り返った原田さんの目が光った。おもむろにじょれんで表面を深さ10センチ程度削ると、すぐに直径1センチほどの穴が見つかった。マテ貝は穴が海水につかる程度の場所を好むといい、さらに周辺の砂を削ると5~6個の穴が確認できた。
ここで使うのが食塩だ。穴が塞がる程度の量を流し込むと、細長い生物がニョキニョキと飛び出してくる。塩分濃度に反応するといい、まるで動くツクシのようだ。
観察に時間をかけていると穴の中に引っ込んでしまうため、モグラたたきのようなゲーム感覚もある。殻の部分をつまんで引き抜いて収穫するが、抵抗するものもいる。「穴を広げるように回すのがコツ」と原田さん。長さが5センチ未満は身も細いため見送った。
引き抜いてからも気は抜けない。砂の上に放置しておくとすぐに穴を掘って潜ろうとするため網やざるに入れる。同じ作業を1時間ほど繰り返し、30個近く収穫した。足が早いため鮮魚店に並ぶことは少ないという。
砂抜きはほとんど不要で、家に持ち帰った後は原田さんが薦めてくれたガーリックバターで炒めた。二枚貝のため熱を加えると勝手に開く。独特の香りはするが味に癖はない。
マテ貝取りは昼間に潮が引く3~8月の大潮などが狙い目だ。原田さんは「マテ貝に限らず、海にはさまざまな生物がいる。潮干狩りを楽しんで」と話した。【蓬田正志】
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