災害時に自治体の首長に避難情報発表の助言などを行う「気象防災アドバイザー」を2023年度に任用していたのは21都道府県の40団体にとどまることが5日、分かった。気象庁がまとめた。気象庁は防災の専門人材を増やしたい考えだが、自治体の財源的な制約や周知不足で広がっていない実情が浮かんだ。

関連死を含め306人が犠牲になった18年7月の西日本豪雨で最初に大雨特別警報が出されてから6日で6年。各地で豪雨が相次ぐ中、自治体の防災力をどう高めるかが課題になっている。

気象防災アドバイザーは気象予報士の資格を持つ人らを国土交通相が認定して委嘱し、その中から県や市区町村などが任用する。広島市で77人が犠牲になった14年の土砂災害で市の避難勧告発表が遅れたのを受け、17年度に運用が始まった。

任用している団体が最も多かったのは愛知県で5団体。埼玉県が4団体、東京、千葉、島根の3都県が各3団体と続いた。常勤や週数回の非常勤など任用形態は団体によって異なる。

気象庁が22年度に実施したアンケートでは、全国で6割弱の自治体が「活用する意向はない」と回答した。この自治体と、「活用する意向はあるができていない」とした自治体に理由を尋ねると「予算の確保が困難」が最多の58%。次いで「依頼できる業務の内容がよく分からない」が54%で、周知不足も課題となっている。

西日本豪雨で被災した岡山県は市町村も含めて任用していない。県担当者は「気象台と密に連携しており、それで十分だと考えている」と話した。

気象庁の担当者は「アドバイザーは自治体目線で防災対応ができるが、そのメリットを伝え切れていない。人材不足の課題もあり、中長期的に育成に取り組んでいきたい」としている。〔共同〕

▼気象防災アドバイザー 平時は自治体内での研修や住民への啓発活動を担い、災害時は首長らに気象状況の解説をしたり、避難情報発表の判断を進言したりする。気象庁は各地域のきめ細やかな気象解説を担う「気象防災のスペシャリスト」と位置付けており、今年4月現在、全国で272人が委嘱されている。気象台や測候所の管理職経験者、気象庁の研修を修了した気象予報士などが対象となる。〔共同〕

鄭重声明:本文の著作権は原作者に帰属します。記事の転載は情報の伝達のみを目的としており、投資の助言を構成するものではありません。もし侵害行為があれば、すぐにご連絡ください。修正または削除いたします。ありがとうございます。