有事に自衛隊の戦闘継続能力(継戦能力)を高めるため、防衛省は組織改編などで不用になった陸上自衛隊の装備品を廃棄せず、必要に応じて再利用できるよう整備・保管する新規事業を計画している。2025年度予算の概算要求に関連予算7億円を盛り込んだ。今春一線を退いた「74式戦車」が保管される予定。
ロシアによるウクライナ侵攻では無人機などハイテク兵器が注目される一方、戦況は消耗戦の様相を呈し、旧式兵器や弾薬、補給品などを確保しておく重要性が浮き彫りになった。日本政府は22年末に閣議決定した国家防衛戦略で「弾薬、燃料、装備品の可動数といった現在の自衛隊の継戦能力は、必ずしも十分ではない」と明記した。
陸自は冷戦終結に伴う部隊編成や主要装備の見直しの一環として、戦車を約1200両から約300両に、りゅう弾砲などの火砲を約1000門から約300門にそれぞれ段階的に削減。これに対し、利用可能な装備をスクラップにするのは「もったいない」といった意見が上がっていた。
新規事業計画は、装備品が風雨にさらされて傷まないよう、専用の保管施設を新設。まずは使わなくなった「74式戦車」約30両と「90式戦車」数両、「多連装ロケットシステム」(MLRS)約10両の保管を念頭に、維持整備の具体的な体制や手法を検証しながら決めていく。防衛省幹部は「実際に使用するかどうかということの前に、予備装備品を持つことは抑止効果が期待できる」と話す。
74式戦車は丸みを帯びた砲塔の形状が特徴で、陸自が1974年に制式採用。89年までに873両を調達し、全国各地の部隊に配備した。徐々に90式など後継の戦車と交代し、今年3月に残っていた岩手と滋賀、岡山3県の部隊でも運用を終了した。74式は最新鋭の「16式機動戦闘車」と同じ105ミリ砲を搭載しており、砲弾は融通が利くという。【松浦吉剛】
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