一人っ子が行う相続は、親族との財産争いでもめることがなく、スムーズに進められると考えられがちだ。だが、相続に詳しい税理士でマネージャーナリストの板倉京(みやこ)さんは「たくさんの手続きを一人ですることはもちろんのこと、親が遠方に住んでいたり負債があったりする場合など、さまざまな事情にも一人で向き合わなければならない」と負担の大きさを指摘する。
では、一人っ子が親の死後に備えておくべきことは何だろうか。板倉さんは「相続で直面する負担を、親の生前からの準備でいかに少なくさせるかということが大事になってくる」と解説する。
効果的な対策として、金融機関の口座の通帳や印鑑、デジタル機器のパスワードなど、死後必要となってくる情報や財産が保管されている場所を事前に把握・集約しておくことを勧める。そうした情報を「エンディングノート」に書き残しておいてもらい、活用するのも有効だ。
親と一緒に実家の片付けを少しずつ進めておくことも有効だという。「親の死後、膨大な家具やゴミがあることに一人で直面し、途方に暮れてしまう人が多い。親と協力し実家の片付けを進めながら、その過程で財産のありかを把握しておくと精神面でも手間という面でもかなり負担を減らすことができる」と話す。
また、一人っ子は入院や介護での出費など金銭的な負担が集中しやすいことも特徴だという。板倉さんは「親とよく相談し、いざという時のために使える口座を教えておいてもらうべきだ」と強調する。口座も複数あると手続きが煩雑になるため、なるべく少数にまとめておいてもらうのがベターだ。
財務省の資料によると、被相続人1人あたりの法定相続人の数は、2002年には3・46人だったが、22年には2・68人となり、年々緩やかに減少している。少子化や一人っ子の増加を踏まえると1人が相続するケースは今後さらに増加していくと考えられる。板倉さんは「これから一人での相続の困難に直面する人が増えていくのではないか」と話している。【小宅洋介】
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