バナナの仲間で多年草の「バショウ(バショウ科)」を有機肥料として生かすことで資源循環型農業を進め、環境を守ろうという愛媛県立大洲農業高校の研究「地域資源『バショウ』 農業のゼロエミッションシステムの構築」が8月、日本学校農業クラブ四国大会の国土保全・環境創造分野で最優秀賞に選ばれた。10月22日から岩手県で開かれる全国大会に3年連続で出場する。【松倉展人】
バショウは西日本の温暖な地域に自生する。学校がある大洲市など愛媛県南予地域を中心にお盆の棚飾りとして親しまれている。しかし、お盆を過ぎると大量に廃棄されていた。同校は地域資源としてのバショウの活用に着目し、2021年度から愛媛大学と共同で研究を進めている。
これまでもバショウの茎から「芭蕉(ばしょう)和紙」をすき、地域特産のブドウを風雨から守る果実袋にする研究に取り組んできた。芭蕉和紙は耐水性があるうえに光をよく通すので果実が色づきやすい。薄くて丈夫で、そのまま土に埋めても土壌に還元できる。「環境に配慮した果実袋」として、「SDGs探究AWARDS2022」(一般社団法人「未来教育推進機構」主催)で中高生部門の最優秀賞に輝くなど、地域課題の解決に向けた各種事業で受賞を重ねてきた。
大洲農高は学校農場でバショウを栽培している。バショウは肥料3要素の一つ、カリウムをふんだんに含む。さらに、1本のバショウが1年間に取り込む二酸化炭素は約20キログラム。肥料の有機物にはバショウが取り込んだ二酸化炭素由来の炭素が含まれており、土壌に還元されることで温室効果ガスである二酸化炭素の排出削減につながる。
これらに着目し、生徒たちは23年に愛媛県西条市の企業と連携してバショウ入りの有機肥料づくりに着手。協力農地から提供を受けたバショウ約1・5トンを出荷し、食品廃棄物や工業汚泥などと混ぜ合わせ、環境に配慮した有機肥料を完成させた。バショウ入り有機肥料を使うことで温室効果ガスを排出しない「ゼロエミッション」の仕組みを作った。
また、この有機肥料を大洲市と周辺地域の基幹作物であるサトイモやブドウの協力農地で使い、効果を検証した。サトイモの場合、従来の化学肥料と同等の生育が確認できた。シャインマスカットは追肥として使うとより効果が上がることがわかった。果実の糖度も従来の肥料では18・3だが、有機肥料は20・1と増すなど、高い効果が得られた。
日本学校農業クラブ全国大会に発表者として臨む生産科学科2年、矢野匠真(たくま)さん(17)は「有機肥料は環境に役立つため、どんどん広がってほしい」と話す。同2年の河野颯汰(そうた)さん(17)は「2050年で100万ヘクタールという国の有機農業の取り組み目標に向け、先は長いが活動を深めていきたい」と意気込みを語った。
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研究発表には次の皆さんも参加している(敬称略)。横山梨華(2年)▽大野将也、菊池祐征、武田海亜、武田鈴、松浦花奈、栁野尋人(以上3年)
愛媛県立大洲農高「バショウ」研究での主な受賞歴
2022年度SDGs探究AWARDS中高生部門最優秀賞
エシカル甲子園優秀賞、消費者庁長官賞
毎日地球未来賞奨励賞
23年度愛媛大社会共創コンテスト準グランプリ
大洲市きらめき大賞
三浦保環境賞愛媛県知事賞
全国ユース環境活動発表大会優秀賞
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