【ヒューストン=花房良祐】9月26日に米南部に上陸し北上した大型ハリケーン「へリーン」を巡り、米メディアは死者が140人以上に達したと報じた。行方不明者の捜索は続いており、公表される死者数はさらに増える可能性もある。被害が大きかったのは海岸から遠く離れた内陸。気候変動でハリケーンが大型化しやすくなったうえ、地元当局の準備不足を非難する声も上がっている。
へリーンは26日に南部フロリダ州に上陸。バージニア州まで北上した。最も死者数が多かったのはノースカロライナ州で少なくとも56人に上った。普段は行楽客に人気の同州の西部で、アパラチア山脈の山あいに点在する街を結ぶ幹線道路は寸断された。
今回のへリーンでは、内陸部で被害が大きいのが特徴だ。ノースカロライナ州西部は大西洋から400キロメートル以上、メキシコ湾から700キロメートル以上離れているにも関わらず、死者が多かった。
米南部では歴史的に、ハリケーンの多くがメキシコ湾沿岸から上陸するため、ルイジアナ州など同湾沿岸の州で被害が多い傾向にある。上陸後には勢力が弱まるため、内陸の被害は大きくなりにくい。
今回の「異変」の背景には、気候変動で海水温度が上昇した影響で、大気中に蒸発した水分をハリケーンが取り込みやすくなったことがある。ハリケーンは上陸後も雲から水分を取り込み、これが集中豪雨の発生につながった。
へリーンは上陸後に「熱帯性低気圧」に変化したが、雨量は依然として多かった。直径は約500キロメートルもあり、過去20年にメキシコ湾などで発生したハリケーンの9割を上回る規模の低気圧となった。
米国では、海沿いの街ではハリケーン被害に備えていることが多く、例えば、高床式にして高潮に備えている住宅も多い。一方、内陸部では洪水への備えが不十分だったと指摘されている。例えば、アパラチア山脈の街では洪水に備えるという発想に乏しかったという。
当局の準備不足を問う声も浮上している。今回、ハリケーンの襲来に慣れているフロリダ州では住民に早くから避難勧告が出されていたが、内陸ではギリギリまで避難勧告がなかったという。
足元、被災地では食料や水が不足している。米メディアは「上陸前に水をあらかじめ用意すべきだった」などと住民が当局を批判する声を伝えた。ノースカロライナ州のクーパー州知事は30日、「準備はしていたが、ノースカロライナ州西部ではこんなことは初めてだ」と述べた。
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