東日本台風から10月12日で5年となります。県内で最も被害が大きかった丸森町では、仮設住宅の用地として使われていた伊具高校の野球グラウンドが返却され、球児たちの元気な声が戻ってきました。
先月、丸森町役場と伊具高校の野球部による記念試合が行われました。場所は伊具高校の野球グラウンド。去年まで仮設住宅の用地として使われていた場所です。
2019年10月、東日本台風の接近により、丸森町では土砂崩れや川の氾濫が相次ぎ、関連死を含めて11人が亡くなり、町中心部も広く浸水する被害を受けました。伊具高校の野球グラウンドは被害を免れ、自衛隊の応急ヘリポートと活用された後、仮設住宅の用地となることが決まりました。
町の復興のためには必要なこと…それでも、当時の高校生には複雑な思いもありました。
伊具高校野球部OB 長尾拓磨さん
「仮設住宅ということでしょうがないとは思っていたが、他の高校の自分のホームグラウンドがあるというのはうらやましく感じましたね」
2020年に伊具高校に入学した長尾拓磨さんです。すでに学校の野球グラウンドは使えませんでしたが、町のグラウンドを借りるなどして活動を続けました。被災前から、野球部の部員不足は続いていましたが、長尾さんが3年生のとき、他校との合同チームで大会に出場したのを最後に部員はいなくなり、休部となっていました。
伊具高校野球部OB 長尾拓磨さん
「後輩が居なくて休部っていうのはだいぶ寂しかったですね」
しかし、今年4月。伊具高校で再び野球部が動き始めます。中心となったのは1年生の大石波之丞さん。新チームのキャプテンでもあります。
伊具高校野球部主将 大石波之丞さん
「強いチームに入るという手段もあったんですけど、簡単に勝つのは面白くないので、あえて弱いチームから始めて頂点をとりにいきたいという気持ちで入りました」
入学してすぐ、自分だけでも野球部として活動すると学校に伝え、部員の募集を始めました。
伊具高校野球部主将 大石波之丞さん(Q、どんな思いで一人でもやると話した?)
「この先どうせ一人でやるとかじゃなくて、絶対に集める気で野球部に入ったのでそのまま続けて人数も集めました」
同学年の男子全員に声をかけたという熱意が実を結び、野球部は部員7人で活動を再開。秋の地区大会では他の部からの助っ人を加え、単独チームでの出場を果たしました。
そして、先月7日。
堤勇高アナウンサー
「こちらのグラウンドでは現在は安全を願う神事が行われています。きょうからこの場所は約5年ぶりに伊具高校の野球場として利用されます」
役目を終えた仮設住宅が撤去され、グラウンドは再び野球場として整備されました。最初の試合は、町役場との記念試合。高校生たちのプレーには、自分たちのグラウンドで試合ができる喜びがあふれていました。
伊具高校野球部主将 大石波之丞さん
「自分たちの球場で力いっぱい試合ができたことにすごく喜びがあります。一からというよりもきょうがゼロからなので気持ちも切り替えて、全力で春の大会に向けて練習していきたいと思います」
伊具高校野球部 菅原翔平監督
「仮設住宅がここに建っていたという経緯があるので、そういった方々にも勇気を届けられるようなプレーを意識して選手とともにやっていきたい」
記念試合には地元の住民も訪れ、声援を送りました。グラウンドがない中でもプレーを続けた先輩たちは…。
伊具高校野球部OB 長尾拓磨さん
「グラウンドの再開は丸森町としての大きな一歩なんじゃないかなと。後輩には環境とか周りの人たちに感謝して野球をプレーしてほしいと思ってます」
東日本台風に翻ろうされた丸森町と伊具高校野球部。復興を手助けし、5年を経て戻ってきた野球グラウンドは、町の未来へとつながっています。
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