防衛省発注の建設工事で本来必要な入札手続きを経ず、既存の受注企業に追加工事名目で発注したケースが5年間で34件あったことが16日、会計検査院の調べでわかった。増額された契約金額は計10億円を超える。一般に公表しない形で発注したため競争原理が働かずコスト高になった可能性がある。
今回見つかった不適切な発注は、工事を開始した後にやむをえず追加工事が必要になった場合に用いる「契約変更」という手法が使われた。
例えば、施工現場の地質が想定より軟弱だったり、埋設物が見つかったりした場合に、地盤改良や埋設物除去のために追加工事費を既存契約に上乗せするケースがある。
検査院は各地の防衛局が発注した工事契約のうち、2018〜22年度までに10防衛局・防衛支局が契約変更した約1200件を調べた。このうち6防衛局が発注した契約34件は競争入札が必要だったにもかかわらず、追加発注の名目で契約変更されていた。増額された工事費は計10億6000万円に上った。
例えば沖縄防衛局では、航空自衛隊の管理棟の新設を受注した企業に無関係の鉄塔建築工事を追加で発注した。契約金額は約1億2000万円増額された。
自然災害への対応といった緊急時の場合などは入札を実施せず、契約変更による追加発注や随意契約で進めることも可能だが、今回はこうした緊急対応にも該当しなかった。
一部の防衛局は現場部隊が早期の完成を要望していたため「緊急に対応する必要があった」などと説明したという。検査院は「予見できない工事ではなく、一般競争入札にする必要があった」と判断した。
入札にかければ複数の業者が応札し、競争により契約価格が低く抑えられていた可能性がある。
有川博元会計検査院局長は「契約変更による発注は他の業者の参入を妨げる。競争の公平性と公正性に欠け、経済性も劣る」と話す。「『緊急性』の名の下に不適切な手法が繰り返されると、特定企業との癒着や不正の温床にもなりかねない。ほかの機関も予算の急激な増額などの際、同様の事態が起こらないよう注意する必要がある」と指摘した。
検査院は不適切な契約変更があった背景について「(防衛局の)会計法令に関する理解が十分ではなかった」としている。
防衛省は検査院の指摘を受け、8月に地方防衛局に建設工事に関する通知を出した。早期の施設整備が必要な場合であっても、契約変更で工事を追加するのではなく、十分な手続き期間を確保して一般競争入札で契約を締結するよう周知したという。
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