札幌市手稲区に住むじゅんこさん48歳。札幌市内の病院で看護師として働いています。長男のやまとくんは18トリソミーという染色体の病気で、生まれたときから体に重い障害があります。
たんの吸引や人工呼吸器による呼吸の管理など医療的なケアが24時間欠かせません。じゅんこさんは理学療法士として働くパパだいちさんと二人三脚でやまとくんの世話をしながら、仕事と育児を両立させていました。
5月に取材してから5ヶ月。今回、誕生日を迎えて5歳になったやまとくんに関するお便りを寄せてくれました。
〈じゅんこさんのお便り〉
「やまとも6月に5歳になって、進学を考える時期になりました。私たちはやまとを特別支援学校ではなく地域の小学校に通わせたいと思っています。こういう子たちが地域で生活してるのが知られていない現状だと思う。地域で一緒に成長するということが、すごく大事なんじゃないか。小学校に行かせてあげたいとチャレンジしています」
お便りを受けてディレクターが訪ねたのは、やまとくんが地域の小学校に初めて見学に行く日。
この夏は、やまとくんと2人で東京に行ってきたというじゅんこさん。「医医療機器を持っているから保安検査とかスムーズにいかないと大変ではあるけれど、意外と大丈夫だった」と話してくれました。
以前からじゅんこさんはやまとくんを積極的に外へ連れ出してきました。医療的ケア児のことを多くの人に見て知ってほしいと考えてきたからです。
「はじめは医療的ケアもあって、普通の子とちょっと違うので、周りがどう見てるのかなって気にしていた。(外に)行ってみれば気にしている暇もなく、意外と周りの人も気にかけてくれたりとかする」とじゅんこさんが話していると…。
やまとくんがじーっとカメラのほうを気にかけていました。
気持ちを言葉では伝えられないやまとくんですが、最近は表情や仕草でたくさん訴えかけてくれていると、じゅんこさんたちは感じているんです。
「すがすがしい、いい顔をするのが、ここ最近。ずっと無表情かつらい顔かの2つだった」とだいちさん。
「歩みは遅いけどゆっくり(成長している)」とじゅんこさん。
2人ともやまとくんの成長を感じているようです。
さぁ、いよいよ小学校へ出発です。
やまとくんが暮らす地域の小学校は全校児童600人以上、特別支援学級に25人が在籍する規模の大きな学校ですが、医療的ケア児を受け入れたことは、まだありません。
子どもたちもやまとくんの見慣れない姿に興味津々です。
「赤ちゃん?」と声をかける児童に「いま5歳。ちょっと(体が)小さいの」とじゅんこさん。
医療的ケア児が地域の小学校に通うにはエレベーターやスロープを設置して、施設をバリアフリー化したり、看護師や介助アシスタントを配置したりと、配慮が必要です。
やまとくんが小学校に通うのは難しい。他の誰でもない、じゅんこさん自身も以前はそう考えていました。
「はじめは、北翔(支援学校)とか1択かなと思っていた。ただ社会に私たちがいるっていうのを、意外と知られてない。医療従事者である私でさえも、医療的ケア児が地域にたくさんいることにすごくビックリした。こんな小さい体だけども、そういうことを伝えるきっかけになる」とじゅんこさん。
手稲中央小学校の立田裕巳教頭も「知ることは大事だと思う。私も恥ずかしながら(やまとくんの病気)18トリソミーは知らなかった。これから何回かお話する機会で、よりよいものを作れたら」と前向きに答えてくれました。
見学で触れた小学生の素直な反応や、先生たちの温かい眼差しに安心した表情を浮かべるじゅんこさん。やまとくんの様子にも手応えを感じたようです。
「すごく声を聞いていた。子どもたちの声。寝ないでちゃんと周りを見ていた。学校の教育だけじゃないものを、やまとは経験してかなくちゃいけない。守られることがすべてでもない」と話すじゅんこさん。
小学校進学への挑戦は続きます。
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