2023年度に不登校だった小中学生が前年度比16%増の34万6482人で、過去最多を更新したことが31日、文部科学省の全国調査で分かった。新型コロナウイルス禍による生活の乱れや、無理に通学させる必要はないとする価値観の広がりが、増加に影響した可能性がある。心理的ケアの強化や、学校内外の「居場所」づくりが急務だ。
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同省の「問題行動・不登校調査」では、病気や経済的理由などを除き、年間30日以上登校していない状態を不登校と定義している。
不登校の増加は11年連続で、30万人を超えるのは初めて。全児童生徒に占める割合は前年度から0.5ポイント増の3.7%だった。
小学生は13万370人(前年度比24%増)で、中学生(21万6112人、同11%増)より増加が目立った。年間の欠席日数が90日以上の児童生徒は不登校全体の55%を占める19万392人だった。
大幅な増加の背景にはコロナ禍の影響があると考えられる。23年度はコロナ禍前の19年度(18万1272人)の1.9倍に増加。文科省担当者によると、行動制限がかかるなどして生活リズムが乱れた影響が続いている可能性があるという。
立命館大の春日井敏之名誉教授(臨床教育学)は「成長期にコミュニケーションの基礎を作りにくい環境が数年続いたことの余波は大きく、今後も増加傾向が続くだろう」とみる。
不登校への理解の広がりも背景にありそうだ。学校以外の多様な場で学ぶことの重要性を認め、不登校の支援を進める教育機会確保法が17年に施行された。コロナ禍による臨時休校なども経て、学校に無理に通う必要がないと考える保護者が増えたとみられる。
不登校の児童生徒について、教員が把握している事実を複数回答で聞いたところ、「学校生活に対してやる気が出ないなどの相談があった」が32%で最多。「不安・抑うつの相談があった」(23%)や「生活リズムの不調に関する相談があった」(23%)が続いた。
「学業の不振や頻繁な宿題の未提出がみられた」は15%、「いじめ被害を除く友人関係をめぐる問題の情報や相談があった」は13%と上位だった。
22年度までの調査では「不登校の要因」を教員に質問。「無気力・不安」が多かったが、教員の主観に影響されている可能性があるとし、質問方法を変更した。
同省担当者は「変更の初年度は大きな変化は確認できなかった。引き続き傾向を見ていく」としている。
不登校の増加は今後も続く可能性がある。子どもの学ぶ権利を保障するためには、不安や悩みに対応できる体制を拡充しながら、学校以外の選択肢を充実させる必要がある。
同省はスクールカウンセラーやスクールソーシャルワーカー(SSW)を増員する方針。小中学校の空き教室などを居場所として利用する「校内教育支援センター」の設置促進、柔軟なカリキュラムを認める「学びの多様化学校」(不登校特例校)の拡大などを急ぐ。
自治体では民間のフリースクールを財政的に支援したり、メタバース(仮想空間)による居場所をつくったりする動きも出てきた。
春日井教授は「教員だけで対策を進めるのは不十分だ。スクールカウンセラーや医療機関などと連携し、チームで解決する体制づくりが求められる」と指摘する。
(大元裕行、森紗良)
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