亡くなった人にもう一度会えるとしたら何を話しますか?

 11月8日、公開された映画で描かれたのは、AIでよみがえった死者と対話する世界。

 技術はどこまで進んでいるのか、そして私たちはどう向き合ったらいいのでしょうか。

 11月8日、公開された、映画『本心』。原作は芥川賞作家・平野啓一郎さんの人気小説です。

 主人公の青年・朔也。亡くなった母親をAIでよみがえらせ、その死の背景を明らかにしていきます。

 専用のゴーグルをつけることで亡くなった母親が目の前にいるかのように会話できます。

 ありえない話に思えますが、すでに中国や韓国では生成AIを使って死者と対話するというビジネスが行われています。

 初日の8日、劇場に足を運んだ人はー

 「年に50~60本見るんですけどベスト10本に入りました。(映画で描かれた世界について)自分の思い出が変わるのが嫌なので、そのまま思い出の中でいいと思います」(映画を見た人)

 亡くなった人と会話出来る世界。街の人はー

 「まだ解明されていない歴史上の人物に会ってみたいですね」

 「志村けんさんとか(会いたい)」

 「小学校の時の担任の先生が亡くなった。子どもが増えたことを伝えたいですね」

 「(使いたいと)思わない。だって考えられませんもの」(すべて街の人の声)

 現実はどこまで進んでいるのか。

 「手を触りあってます。いないのにいるみたい」(熊坂 友紀子 記者)

 体験したのは、アップルが2024年6月、日本で発売したゴーグル型端末です。

 「遠く離れている人とハイタッチまでできます。本当に会ってる感じで嬉しい気持ちになりますね」(熊坂記者)

 顔をスキャンして作った3Dモデル、アバターを使って、離れた場所にいる人ともまるで会っているように語ることができます。

 この会社では現実の世界にデジタルコンテンツを融合させるサービスを提供しています。これはゴーグルをつけて操作するデジタルの音楽プレーヤー。

 「現実世界に本物のマルチプレーヤーが急に出てきた感じで、自由に手と視線だけで曲を変えていけるのがいいですね」(熊坂記者)

 現実とデジタルとの融合は驚くべきスピードで進んでいます。

 「このサンドイッチのカロリーを教えて?」(熊坂記者)

 「そのサンドイッチのカロリーは、具材やサイズによって変わるから正確には分からんけど、200~300キロカロリーくらい。おいしそう。楽しんで食べてな」(AI)

 ではAIが現実には存在しない人や亡くなった人を目の前に作り出す日は来るのでしょうか。

 「リアルとデジタルの境目が曖昧になってきてるし、今後もそれは加速すると思うので、もしかしたら目の前で話している人が実在する人間なのかAIなのかっていうことすら、気にしなくなるかもしれない。そういうのが当たり前になってくるかと思います」(STYLY 森逸崎 海さん)

  「もっと喋りたかったなとか、もっと父との時間を大事にすればよかったなっていう後悔があるので、そこがあるから会いたいなっていうのはありますね」(北海道胆振地方在住 野田瞳さん)

 亡くなった父親ともう1度話したいという、胆振地方に住む野田瞳さん。30年前の11月8日、父親は自ら命を絶ちました。

 手元に残っている父親との最後の写真。小学校の時、一緒に出場したマラソン大会です。

 「ツーショットはこれが最後ですね。親子マラソンが小学生しか走れないので一緒に。6年生の時、最後に記念だからお父さんと一緒に走ろうか」(野田さん)

 思春期になり父親と話すことも減りました。そうした中、高校1年生で経験した父親との突然の別れ。もう一度会えたら伝えたい気持ち。お父さんが大好きでした。

「まずは謝りたいですね、父に。謝って、もうちょっとコミュニケーションをちゃんと取りたかったなっていうのはありますね」(野田さん)

 映画『本心』の主人公の母親も自ら死を選び突然、この世を去ります。

 遺された主人公は母親の本心を知りたいとAIを使い蘇らせます。映画のAI監修を担当した清田純さんはAIで亡くなった人を復活させる技術について実用化が近づいていると話します。

 Q映画の世界観みたいなのは、何年後くらいにくる?
 「きょうの時点での予測では、5年以内ですね。多分半年後に聞かれたら多分もっと近づいていると思います。(技術の)進む速度が我々専門家の予測も超えてきているんですよね」(映画『本心』AI監修 清田純さん)

 一方で、急速に進化する生成AIについてルールが必要だと感じています。

 「速すぎる進展で人類に悲しいことが起こらないことを本当に去年と今年はみんなで話し合ってるんで。具体的にどういう策がでてくるかは今後1年くらいで色々出てくると思いますけど」(清田さん)

 映画では、亡くなった母親の本心を探る主人公が、大切な人に自分の本音を伝えるかどうか葛藤する姿も描かれています。石井裕也監督はAIが進化する中でも変わらない、「人間のこころ」の価値についても考えてほしいといいます。

 「本音を言えないということ、本心を言えないし、言いたくないし、潜ませようとする。それが人間の心で。それをAIにしたときに記憶は失われないですからおそらく嘘もつかないし。AIがそういう意味で優れているよねってなってしまったら人間は存在する価値がなくなっていくんだろうなって」(映画『本心』石井裕也 監督)

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