変形タッチスクリーン技術「DeformIO」のイメージ Matt Sutton
<英バース大学の研究チームが開発した新技術が、画面を通じて物体を感じる未来を描く>
未来のタッチスクリーンは、画面を通して物体を感じられるようになるかもしれない。
【動画】スマホ画面で「デジタル物体」に触れる未来...変形タッチスクリーン技術「DeformIO」
変形可能タッチスクリーン技術の「DeformIO」は、英バース大学の研究チームが開発した。ユーザーが指で力を加えると、表面が柔らかくなったり堅くなったりする。「CHI人と情報システムの相互作用に関する国際会議」でこのほど研究チームが発表を行った。
DeformIOでは画面を通して物体を感じることができ、商取引や通信、医療、ゲームなどさまざまな分野に応用できる可能性がある。ユーザーはスマートフォンの画面を通じ、例えば製品の生地の肌触りを感じたり、車載画面で地図や温度計を操作したりできる。
「普通の物理的な物体と同じように、デジタル物体を直接操作できる」。バース大学でコンピューターサイエンスを専攻する大学院生のジェームズ・ナッシュはそうコメントしている。
DeformIOはシリコン製で、空気力学と抵抗感知技術を使って継続的に触覚を体感できる。画面の下に「ピン」を立てて配列し、押さえると画面のその部分が低くなる仕組み。この技術の従来のバージョンでは可動式のタッチスクリーンパネルや固定ピンを採用していたが、あまりうまくいかなかった。
ユーザーはDeformIOの柔らかい感覚の画面上で指を走らせることができ、画面の複数箇所を同時にへこませることもできる。
「我々のスクリーンでは、ユーザーが柔らかい表面で豊かな触感を感じ取れる。現代のガラスを使ったスクリーンと利点は同じで、表面上で流れるように指を動かすことで端末を操作できる。だが、力を使ってより深いレベルで端末を操作できるという利点が加わる」とナッシュは解説する。
研究チームはDeformIOについて、ゲームや医療トレーニングのシミュレーション、さらには離れた相手とのビデオ電話を通じた物理的接触など、幅広い用途に使用できると期待する。
車載タッチスクリーンでデジタル地図を使う際にも利用できるかもしれない。
「今の車で一般的になっているタッチスクリーンを強化できる可能性もある。例えば力を加えて車内の温度を調整し、設定温度が上がるにつれて指の下の表面が堅くなるのを感じることができる」。同技術の紹介動画でナッシュはそう説明している。
「変形可能ディスプレイで有望なもう一つの分野にデジタル地図がある。例えば陸地は堅くて水の部分は柔らかい地理データなど、ディスプレイに組み込まれた情報をユーザーが体感できる。さらには力拡張ジェスチャーを使って端末をシームレスに操作し、力を加えて例えば地形データと衛星ビューの層の間を参照することも可能だ」
「地図からは膨大な量の情報が得られる。例えば都市をプッシュすれば即座に人口データを入手でき、店をプッシュすれば堅さによって営業中かどうかが分かる」
DeformIOは現時点でまだ試作品の段階だが、何年もかけて開発すれば、いずれ革新的な製品になることが期待される。
「10年から20年で、このコンセプトを具体化して携帯電話に搭載できるかもしれない。今のところはこれに最も適した応用分野を探っている」。バース大学コンピューターサイエンス教授のジェイソン・アレクサンダーは声明でそう述べている。
(翻訳:鈴木聖子)
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