スウェーデン王立科学アカデミーは9日、2024年のノーベル化学賞を米ワシントン大のデービッド・ベイカー教授、米グーグル傘下ディープマインド社のデミス・ハサビス氏とジョン・ジャンパー氏の3人に授与すると発表した。
ベイカー氏は「計算によるたんぱく質の設計」、ハサビス氏とジャンパー氏は人工知能(AI)を利用した「たんぱく質の構造予測」の研究開発に貢献したと評価された。アカデミーは「3人の研究は生化学と生物学の研究に新しい時代を開いた」とたたえた。
たんぱく質は20種類のアミノ酸の組み合わせで構成されている。ホルモンや抗体など生命を維持する上で不可欠な物質だ。
ベイカー氏は1990年代から、たんぱく質の構造に関する研究を始め、その構造を予測するプログラムを開発。予測結果に基づいて、たんぱく質を実際に作り出すことに成功し、03年に発表した。
ハサビス氏は10年にディープマインド社を設立し、AIの開発を本格化。たんぱく質の構造予測に取り組んだが、当初はその精度が低かった。ジャンパー氏が17年に同社に入社後、2人は機械が自ら学習する「深層学習(ディープラーニング)」の技術を活用し、既に知られていたたんぱく質の構造予測に成功した。
その後、ハサビス氏とジャンパー氏はAIを発展させ、未知のたんぱく質の設計も可能にした。この技術は、医薬品や新素材などの開発の応用されている。
ハサビス氏は10代でプログラマーとなり、ゲーム開発者を経てAIの開発に着手。10年代には囲碁AI「アルファ碁」を開発し、トップ棋士に勝利するなど話題になった。ジャンパー氏は、ディープマインド社が極秘にAIによるたんぱく質の構造予測の研究を始めたと知り、自身のアイデアで同社のAIをさらに改良させたいと履歴書を送り、共同研究を始めたという。
産業技術総合研究所の富井健太郎・研究チーム長(計算生物学)は3人の研究成果について「体の中で機能しているたんぱく質について、本物に近い立体構造が分かるようになった。ライフサイエンス分野全体の研究を加速させ、医療分野に及ぶ影響は大きい」と話した。
授賞式は12月10日、ストックホルムで開かれ、賞金1100万スウェーデンクローナ(約1億6000万円)が贈られる。【鳥井真平、藤沢美由紀、信田真由美】
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