日立製作所としずおかフィナンシャルグループ(FG)傘下の静岡銀行は15日、勘定系システムの追加機能の開発効率化へ生成AI(人工知能)の活用に乗り出すと発表した。金融機関の基幹業務を担うシステム開発への生成AI活用は国内初という。2025年4月にも実用化し、将来は導入範囲を広げる。
勘定系システムの機能強化の工程は大きく、①新たな決済手段など追加したい機能の要件定義、②システムに落とし込むための設計、③設計に基づきプログラミングを書く「製造」と個々のプログラムの動作を確認する単体テスト、④システム上に組み込んで正しく動くかを見るテスト、の4段階がある。
生成AIはまず③の製造・単体テストに用いる。日立と静岡銀はオープン勘定系システム「オープンステージ」を共同開発し21年1月から稼働する。静岡銀では新たな機能追加が年間200〜300件あり、実装にそれぞれ1カ月から2年かかる。このうち全工程の約3割を要する製造・単体テストでシステム担当者の作業を生成AIで省人化する。
工程の真ん中を選んだのは情報のインプットとアウトプットの相関が分かりやすいためだ。24年3月から生成AIの活用を模索し、約2カ月間の初期実験では半日〜2日かかっていた製造が1時間未満に短縮できたという。
実用可能性が認められたことから10月から本格的な技術実証に移る。製造・単体テスト全体で3割ほどの期間短縮を見込む。25年2月まで複数の案件を検証し同4月から実用化する。その後、工程の川上と川下での生成AI活用も検証する方針。
静岡銀はメインフレームという大型の専用コンピューターを軸とした従来システムを機能追加などが容易なオープン勘定系に移行し、1案件当たりの開発工程数が35%ほど減った。同じ開発費用と期間でみると対応できる案件数が5割増えたという。さらなる生産性向上へ生成AIの活用を進める。
他の地銀各行でも勘定系システムをメインフレーム型からオープン型に移行する動きが強まり、システムベンダー同士のシェア争いも激しくなっている。オープンステージは伊予銀行が28年の稼働を目指して日立と基本合意し、滋賀銀行も採用へ調整を進める。
横浜銀行や北陸銀行が共同利用するNTTデータの「メジャー」は24年1月にオープン型へ移った。他にも日本IBMやBIPROGY(ビプロジー、旧日本ユニシス)などもしのぎを削る。日立と静岡銀は外販までつなげ、勘定系システムを共同利用する提携行を増やしたい考えだ。
22年に持ち株会社化したしずおかFGは23年度から取り組む中期経営計画でデジタル化を一つの柱に掲げる。最終年度の27年度に21年度比でシステム関連の既存経費を150億円ほど減らす一方、デジタル人材の育成や決済手段の拡充といった成長分野では費用を270億円積み増す。
最高情報責任者(CIO)を生成AIで再現した「デジタルCIO」を通じてシステム開発の起点となる「検討書」を迅速に取りまとめる実験も24年から取り組む。勘定系システムの開発への生成AI活用にもいち早く挑み、効率化で成果を上げたい考えだ。
(佐伯太朗)
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